改修と新築のどちらがよいのか比較したい

建物が古くなってきたとき、「このまま改修して使い続けるか、それとも建替えるか」で悩まれる方は多くいらっしゃいます。
この選択は、建物そのものにとどまらず、経営方針、事業の継続性、働き方や利用者の利便性にも大きな影響を与える重要な判断です。

「何を基準に判断すればいいのか分からない」、「社内の意見がまとまらない」といったお悩みに応えるために、本ページでは、「改修」と「新築(建替え)」のそれぞれの特徴や違いを整理し、判断に必要な視点や考え方、進め方をご紹介します。

建築の専門家でなくても理解しやすいように構成していますので、まずは現状を見つめ直し、考えを整理するきっかけとしてご活用ください。

01 建物の「老朽化」、何が問題?――最初に整理しておきたい現状のこと

「この建物、もう古いけど、そろそろ建替えたほうがいいのかな?」等、建物の維持や活用を考えるうえで、まず頭に浮かぶのが「老朽化」の問題です。

1)建物はいつまで使える?

建物の維持に悩んだとき、「耐用年数」という言葉が気になる方も多いかもしれません。
たしかに、国税庁が定める減価償却資産の「耐用年数表」では、
鉄筋コンクリート造の事務所用の基準が記されています。
しかし、これはあくまで会計上の目安であり、「建物が使えなくなる年数」ではありません。

実際の建物の寿命は、以下のような多くの要因にも左右されます。

・ 建物の仕様や建築当時の設計・施工の品質
・ 建築当時の法規制や耐震性能等の技術
・ 地震や風雨等の外的影響の蓄積
・ 維持管理の状況(定期点検・修繕の有無)
・ 耐震改修や用途変更、増築の有無

例えば築40~50年を超えても、丁寧にメンテナンスされている建物は、今もなお快適に使われているケースがあります。一方で、使用頻度が高く、設備や内外装が劣化している建物では、築年数に関わらず大規模な改修や建替えが検討されることもあります。

2)老朽化のサインはどこに出る?

「そろそろ見直しが必要かもしれない」というサインは、次のようなところに現れます。

・ 空調・給排水・電気設備等の老朽化
・ 空調・照明・給排水等、設備機器の不具合や交換時期の到来
・ 外壁や屋上のひび割れ、雨漏り等、外装の劣化
・ 耐震性能が現行基準に適合していない
・ バリアフリーや省エネ等の社会的要請への未対応
・ 法令改正により対応が必要な設備・仕様の発生

建物を「使い続けられるか」「改修で対応できるか」「建替えるべきか」を考えるには、まずはこうした現状を冷静に整理することが、次のステップにつながる第一歩になります。

02 改修か?建替えか?――判断が難しい要因とは

「古くなったから、建替えた方がよいのでは?」
「でも、改修の方が安く済むのでは?」
このように、改修か建替えかで迷う方は少なくありません。

その理由は、「正解」が一つではなく、建物の状態や使い方、今後の事業方針等、様々な要因によってメリット・デメリットが変わってくるからです。

1)よくある「印象」――そのまま判断して大丈夫?

例えば、こんな印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

・ 改修の方がコストを抑えられる
・ 新築(建替え)の方が見た目も良く、企業イメージにつながる
・ 改修の方が早く終わる
・ 建替えれば、耐震性や設備は最新になる

どれも一理あるのですが、これだけを判断基準にしてしまうと、かえって後悔につながる可能性もあります。

2)比較すべきは「コスト」だけではない

改修と建替えの判断では、次のような複数の視点から総合的に検討することが大切です。

・ 今後の事業方針や将来の拠点戦略(例:統廃合、移転、拡張)
・ 建物の構造や法規対応状況(例:耐震性、バリアフリー、省エネ法適合等)
・ 働き方や利用方法の変化への柔軟性(例:レイアウト変更への対応力)
・ 周辺環境の将来的な変化(例:再開発エリア、近隣建物、利便性)

つまり、「今直す/建て直す」ことの先にある未来を、どう見据えるかが判断のカギになります。

3)なぜ判断が難しいのか?――迷いを生む「前提のズレ」

多くの発注者が意思決定でつまずく背景には、次のような前提条件の不透明さがあります。

・ 今後の事業方針や将来の拠点戦略(例:統廃合、移転、拡張)
・ 建物の構造や法規対応状況(例:耐震性、バリアフリー、省エネ法適合等)
・ 働き方や利用方法の変化への柔軟性(例:レイアウト変更への対応力)
・ 周辺環境の将来的な変化(例:再開発エリア、近隣建物、利便性)

こうしたときこそ、一度立ち止まって「現状の棚卸し」から始めることが大切です。

4)「なぜこの建物を残したい、変えたいのか」を言語化する

判断の第一歩は、「何のために、どのような建物をつくりたいのか」という目的の言語化です。

・ どのように使い続けたいのか
・ 変えることで、どんな未来につなげたいのか

それを関係者と共有し、計画の「軸」をつくることで、検討がブレなくなります。
この章の内容を踏まえ、次章では「比較の視点」をより具体的にご紹介します。

03 将来性まで見据えた比較の視点――コストも比較

改修と建替えを比べるとき、最も注目されるのが「コスト」です。
たしかに、初期費用だけを見ると改修の方が安く見えるケースもあります。
しかし、建物は一度つくったら、10年、20年、それ以上と長く使っていく資産です。
判断の軸には、「将来にわたってどう活用していくか」という視点が欠かせません。

1)初期コストだけでなく、「ライフサイクル」で考える

建替えか改修かを比較する際は、「建設時点のコスト」だけでなく、「その後にかかる運用・更新コスト」も含めたトータルでの評価が必要です。

項目 改修(例) 建替え(例)
1.初期コスト 比較的低め(内容により変動) 高め(解体費・仮移転等含む)
2.維持管理コスト 老朽設備のままだと高くなる傾向 最新設備により当面の更新コストは抑えやすい
3.省エネ性能 省エネ機器等で一定の改善は可能 高性能化が図れる
4.法適合 現行法に部分的に対応 耐震・バリアフリー等を最新基準で整備

2)「価値をどう高めるか」という視点でも見てみる

建物は単なる「箱」ではありません。
そこを利用すると、企業や組織の文化、価値観、姿勢が表れます。
それは日々、従業員に共有されて浸透します。
そして新たな価値を生み出す空間でもあります。

例えば

・建替えによってブランドイメージや信頼感を刷新できる
・サービスや働き方に合わせて空間を抜本的に見直すことができる
・ZEBやBCP対応を通じて社会的責任や企業姿勢を発信できる

一方で、改修によって「使い慣れた空間を活かしながら価値を高める」ことも可能です。

重要なのは、企業の事業や将来像と重ねて、
「どちらの選択が、自社にとって最も価値のある投資になるのか」を考えることです。

この章では「比較するための視点」をご紹介しました。
次の章では、「その判断をどう進めていくか」、検討のステップについて整理していきます。

04 進め方とスケジュールの違い――事業への影響も踏まえて

改修と建替えを検討する際、費用と並んで重要になるのが「プロジェクトの進め方」と「スケジュール」です。
特に、日常業務やサービスを止めずに進めたい場合、どのように工事を進めるかは意思決定に大きな影響を与えます。

1)改修(リノベーション)の場合の例

既存建物を活かす改修工事では、建物の状態を調査し、直すべき範囲を見極めたうえで、建物を使用しながら工事を進めることも可能です。
大きな流れは次の通りです。

関係者 主な役割
1. 現況調査・診断 老朽化や劣化箇所の把握
2. 計画・設計 要望と実態を踏まえ、どこを、どの程度直すかを検討し、設計図書を作成
3. 工事 改修工事を実施。夜間・休日を利用した段階施工等も可能

特長は、工事内容によりますが、営業や業務を継続しながら進行できる柔軟性です。
一方で、音や振動、作業時間の制約、工事中の不便等、運用への影響を最小限に抑える工夫が求められます。
期間は半年〜1年程度が一般的ですが、耐震補強や設備更新等改修内容と規模によって長期化することもあります。

2)新築(建替え)の場合の例

一方で、建替えは既存建物の解体から始まるため、別途仮施設の確保や一時的な閉鎖が必要になります。
大きな流れは次の通りです。

関係者 主な役割
1. 解体工事 仮移転や一時閉鎖が必要
2. 計画立案・設計 ゼロベースで新しい建物を検討
3. 工事 地盤や建物基礎の工事から構造・外装・内装工事まで順番に工事

プロジェクト期間は通常2年以上を見込むことが多いです。
長期間にわたる事業や財務への影響、建設プロジェクトチームの立ち上げによる人的資源の確保、竣工後の移転や事業開始の準備等、中長期的な視野の経営判断が求められます。

3)段階的に進める――今できる対応と将来の備えを両立する

「できれば新築(建替え)したい。でも今は難しい…」という声は少なくありません。
そのようなときには、段階的な進め方も有効です。

・まずは優先度の高い改修で建物の喫緊の課題を解決
・中長期で建替えに向けた資金・計画・体制を整えていく
・業務や利用状況に合わせて段階的に進行

このように、「今できること」と「将来の理想」をつなぐ選択肢も存在します。
重要なのは、工期や運用、事業への影響、人的・金銭的リソースを総合的に見極めたうえで、自社に合った進め方を選ぶことです。

05 判断に向けて――整理すべき視点と進め方の工夫

改修か建替えかの判断は、「自社にとって納得できる選択肢は何か」という視点で進めることが大切です。
そのためには、関係者が共通理解をもとに相談できるように、判断の土台となる情報を整理・可視化しておくことが重要になります。

1)判断材料として整理しておきたいこと

まずは、社内での検討・議論の前提となる「条件」や「判断材料」を揃えましょう。
次のような観点を一覧化しておくと、検討がスムーズに進みます。

項目 内容(例)
1. 建物の現状 老朽化、耐震性、法対応の状況
2. 今後の事業方針 拠点統廃合、従業員の増減、新しい働き方への対応等
3. コスト 初期費用、運用コスト、中長期的な更新費用等
4. スケジュール 工期、仮移転、事業への影響等
5. ユーザー視点 利用者・従業員の声、快適性・安全性等

これらを比較できる資料にまとめておくことで、関係者と相談しやすくなります。

2)判断に迷ったときは

迷った場合は、改修案・新築(建替え)案の両方を並行して検討・比較することも有効です。

・改修案と建替え案でのコスト・スケジュール・リスクの一覧化
・企画から設計・工事までの各段階のメリット/デメリットの整理
・将来にわたるライフサイクル視点での検討

必要に応じて、第三者(設計者、専門家、マネジメント支援者)に相談しながら、客観的な視点を取り入れることも、社内の合意形成をスムーズにします。

3) 迷いがあることを前提に、段階的に進める

将来を見据えた大きな判断ほど、悩みや迷いが生じます。
大切なのは、「いま何が分かっていて、何が分からないのか」を明らかにし、段階的に一歩ずつ進めていくことです。

例えば

・まずは建物の状態を把握する
・次に改修・新築(建替え)それぞれの条件と影響を整理する
・社内で共有し、方向性を少しずつ固めていく

こうした段階的な進め方が、「納得感のある選択」へとつながります。

06 まとめ――「正解」より「納得」できる選択肢を

改修か建替えか――
「この選択に唯一の『正解』はありません。
しかし、自社にとって『納得できる選択肢』は、必ず見つけられます。

建物の状態や使い方、事業の方向性、社内体制や予算等、様々な条件によって「適した選択肢」は異なります。
大切なのは、自分たちにとって「納得できる選択肢」を見つけることです。

1) 判断は「段階的」に整理できます

迷いがあるのは当然のことです。
そのなかで、以下のように一歩ずつ段階を踏んで整理することで、納得感のある判断につながります。

・建物の現状を正しく知る
・改修・建替えそれぞれの違いや特徴を理解する
・社内での意見や将来像を共有する
・複数案で比較検討する。

結論を急ぐよりも、丁寧に一つひとつに整理することが、後悔のない判断につながります。

2) 「一緒に考える」存在として

どちらが良いか分からない――
そんなときは、ひとりで抱え込まず、ぜひご相談ください。
私たちNCMは、発注者の立場で、建物や事業の「これから」をともに考えるパートナーです。

「まずは状況の整理から始めたい」、「専門家に相談しながら判断したい」
そんな段階からでも、どうぞお気軽にご相談ください。

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