既存建物の改修をどのように進めればいいのか分からない
建物を改修したいけれど、何から始めればいいのか分からない――。
そんな声におこたえして、基本の流れや注意点を分かりやすく整理しました。
まずは、状況を整理するところから一緒に考えていきましょう。
01 何から始めればいい? ――「目的」と「工事の考え方」を整理しよう
建物が古くなってきたとき、「まずは工事会社や設計事務所に相談すればいいのか」と考える方も多いかもしれません。ですが、改修の成否は「最初の考え方」で決まると言っても過言ではありません。
それは「なぜ直したいのか」「どう使い続けたいのか」を整理することが重要です。
1) まず確認したい、「修繕」と「改修」の違い
| 区分 | 修繕 | 改修 |
|---|---|---|
| 目的 | 壊れた部分を元に戻す | 使いやすくする・価値を高める |
| 工事例 | 水漏れ補修、外壁のひび割れ補修、塗装の塗り替え | レイアウト変更、省エネ化、耐震補強等 |
| アプローチ | 不具合が出たら対応する | 将来を見据えて計画的に行う |
「修理が目的」なら修繕でも十分ですが、
機能性の向上や働きやすさの改善等を目指す場合は「改修」の考え方が必要です。
2) 目的が見えてくると、やるべきことも見えてくる
例えば、次のような理由で改修を検討する方が多くいらっしゃいます。
・ 空調・照明等の設備、トイレが老朽化してきた
・ 建物の使い勝手が時代に合わなくなってきた
・ 耐震性やバリアフリーの観点で不安がある
・ 集客力を高めるために建物を刷新したい
「どこを直すか」よりも、「なぜ直したいのか」、「直した先のイメージ」を明確にすることで、工事範囲や優先順位が整理され、必要なステップが見えてきます。
3) 今後の使い方・使い方の変化も一緒に考える
改修の計画を立てるうえでは、次のような視点も重要です。
・ このまま建物を延命しながら数年維持していくのか
・ 長く使うために抜本的な改善をしたいのか
・ 将来的に建替えも視野に入れて段階的に改修したいのか
これらの方向性によって、かけるべき費用や工事の規模が変わってきます。
「現在の課題」と「これからの使い方」をセットで整理しておくことで、手戻りやブレのない改修計画を立てやすくなります。
02 どんな改修がある? ―― 工事の種類と考え方
「改修」といっても、内容や目的は多岐にわたります。
劣化した設備を更新する工事もあれば、レイアウト変更や外観の刷新、耐震補強等、構造や機能にまで踏み込んだ工事もあります。
ここでは、改修の主な分類と、その進め方の考え方を整理してご紹介します。
1) 改修の分類(目的別)
| 種類 | 改修内容(例) | 主な目的 |
|---|---|---|
| 1.設備更新 | 空調・照明・給排水・電気等の交換 | 老朽化対応・省エネ・快適性向上 |
| 2.機能改善 | 水漏れ補修、外壁のひび割れ補修、塗装の塗り替え | レイアウト変更、省エネ化、耐震補強等 |
| 3.耐震・防災対応 | 耐震補強、浸水対策、停電対策、消火設備の更新 | 利用者の安全性の確保 |
| 4.法対応 | バリアフリー、建築基準法への適合 | 規制遵守・利便性の向上 |
| 5.意匠改修 | 内外装の更新、デザインのリニューアル | イメージ刷新・ブランド力・集客力向上 |
一般的に、改修を行う際は、複数の改修を同時に行うことが多いです。
2) 「全部やらなきゃいけないの?」という疑問について
全てを一度に実施する必要はありません。建物の状態や予算、運用方針に応じて、優先順位をつけて段階的に対応することが現実的です。
そのためには、次のような視点で計画を整理することが有効です。
・ どの部分に劣化や不具合があるか(現状把握)
・ 今後の使い方と比べて何が使いにくいのか(課題の見える化)
・ どの目的を重視するのか(安全性、快適性、イメージ等)
・ 建替えや用途変更の予定があるか(将来視点)
このように、現状と目的、将来計画をセットで考えることで無理のない改修の進め方が見えてきます。
3) 改修の規模感もさまざま
改修は「どこまで手を入れるか」によって改修範囲や利用者への影響が大きく変わります。
・ 小規模改修:空調や照明、内装等の部分的な更新
・ 中規模改修:ワンフロアの全面リニューアル、共用部改修等広範囲な改修
・ 大規模改修:耐震改修、外壁の全面改修等建物全体に及ぶ改修
将来的に全体改修や建替えを視野に入れている場合でも、一部だけを先に直す「段階的な改修」も有効な選択肢です。
このように、改修には幅広いパターンがあります。
次章では、「では誰に依頼すればいいのか?」「どんな方法で発注するのか?」という疑問におこたえしていきます。
03 誰に依頼する? ―― 相談先と発注方式を整理しよう
改修を進めるにあたって、最初に悩みやすいことは「誰に相談すればよいのか」「どうやって発注を進めたらよいのか」の判断です。
設計事務所?工事会社?それともコンサルタント?――
それぞれ役割や視点が異なるため、発注者の目的や状況に合った進め方を選ぶことが大切です。
1) 改修プロジェクトの関係者とその役割
| 関係者 | 主な役割 |
|---|---|
| 設計者 | 改修の設計(図面作成)、デザインの検討、法規への対応等 |
| 施工者(工事会社) | 工事の実施、工程管理、安全管理、現場調整 |
| コンサルタント(コンストラクション・マネジャー) | 発注者の立場で、計画段階から設計・施工の判断支援、全体調整・コスト管理等 |
改修では、計画の初期段階から中立的に全体を整理してくれるパートナーがいると、進め方が大きく変わります。
改修は「検討中に条件が変わる」「設計と施工が密接に関係する」ため、第三者の視点での助言や進め方の整理が効果的です。
2) 発注先の違いと選び方
改修の発注方法は主に次の3つがあります。
1. 設計事務所の場合(設計施工分離方式)
特徴:設計と施工を別々に依頼する方法。
・設計段階で要望や予算に沿ったプランをしっかり検討できる
・複数の施工会社から見積を取り、比較・検討ができる
・工事の発注は別に行う必要がある
向いているケース:
・複雑な要望がある場合
・中立的な立場で設計してほしいとき
・複数社から比較して施工を選びたいとき
2. ゼネコンの場合(デザインビルド、設計施工一括方式)
特徴:設計から施工までを1社に一括で任せる方法。
・コミュニケーションの手間が少なくスピーディー
・工期短縮やコストの把握がしやすい
・設計と施工が一体のため、第三者的な視点が入りづらい
向いているケース:
・短期間でまとめたい
・改修内容が比較的明確である
3. CM会社の場合(コンストラクション・マネジメント、CM方式)
特徴:発注者の立場でプロジェクト全体を管理・支援する専門家(コンストラクション・マネジャー、CMr)を活用する方式。
・改修するか改修しない等の方針、条件整理、費用から相談できる
・設計・施工を分離しつつ、中立的な立場で調整・マネジメントしてもらえる
・複数案の比較検討、コスト・工程の最適化が可能
・設計者や施工者を別に選定する必要がある
向いているケース:
・改修しないことも含めて相談したい
・予算やスケジュールに不安がある
・関係者が多く、調整が大変そう
・重要な判断をしっかりサポートしてほしい
・第三者の立場の専門家に客観的な説明や相談したい
3) 発注方式は「建物の状況」と「社内体制」によって選ぶ
どの方式にもメリット・デメリットがあります。 建物の状態だけでなく、社内でどれだけ検討・判断の時間が取れるのか、誰が主体で進めるのか等の「体制」も考慮したうえで、自分たちに合った進め方を検討しましょう。
もし「何を、誰に、どう頼むべきか」に迷ったときは、早い段階から相談をいただくことで、余計な手戻りや混乱を防ぐことができます。
NCMは、発注者の立場で中立的にプロジェクト全体を俯瞰し、以下のような支援を行います。
特に専門的な判断が求められる場面で、発注者が迷わず判断できる環境をつくります。
・現状課題と改修目的の整理
・適切な設計者・施工者の選定支援
・複数の発注方式の比較とリスク評価
・設計内容・見積・施工計画のレビュー
・工事期間中の進捗・品質・コストの管理支援
04 計画づくりで大切なこと――優先順位と段取りの立て方とは?
改修の方針がある程度定まっても、「実際どうやって進めていけばいいのか」は多くの方にとって悩ましいです。
予算やスケジュール、関係者の調整等を考えると、いきなり設計や工事の話に進むのではなく、最初に「考えるべきこと」を丁寧に整理することが、成功への第一歩になります。
1)現状の把握と整理
まずは、建物の現況を客観的に捉え、今後の使い方や課題とセットで整理します。
・設備や構造の老朽化の状況(専門家の調査や診断が有効)
・日々の使い勝手や運用上の不便さ(現場ヒアリングが重要)
・今後の使い方、組織の変化によるニーズの変化
この段階で「何が課題なのか」を共有できる資料や図を整えておくことで、その後の社内合意や関係者との議論がスムーズになります。
2)「全部はできない…」だからこそ、優先順位を
改修では「今すぐやるべきこと」と「中長期的に対応すべきこと」に分けて考えることが重要です。
例えば
・安全性や機能維持のために、すぐに対応が必要な部分
・快適性や利便性、組織の変化への対応のために、将来を見据えて検討すべき部分
限られた予算や工期の中で、何を優先すべきかが整理されていると、社内の判断や説明も通りやすくなります。
3)社内の合意形成は「早めに」
建物は、経営層・利用者・施設管理部門等、関係者が多い資産です。
特に大規模な改修や用途変更を伴う場合、関係者に「何のために」、「どこを直すのか」を共有し、理解を得られるか、時には協力してもらえるかが非常に重要です。
・社内ヒアリングで課題を整理しておく
・改修の目的や優先順位を見える化した資料をつくる
4)一括ではなく「段階的な改修」も選択肢に
全てを一度に実施できない場合でも、目的を明確にすれば、段階的に着実に進めることも可能です。
・使用頻度、利用者が多い高いエリアから優先的に着手
・数年後の建替えを見据えた対応としての部分改修
・設備機器等の更新時期に合わせた分割更新
現実に即して「段階的に進める」ことは合理的な戦略です。
初期にその見通しを整理しておくことで、柔軟で無理のない計画につながります。
5)改修の計画づくりこそ、最も大事な「準備段階」
改修は「建てるよりも難しい」と言われることもあります。
それは、既存の制約や関係者の想いの中で、判断と調整を積み重ねていくプロセスだからです。
目的と現状を見つめ、関係者と対話しながら一歩ずつ整えていく計画こそが、後悔しない改修への第一歩になります。
05 パートナー選びと相談のタイミング――「判断に迷ったら」どうすれば?
改修プロジェクトは、建物の状況も、使い方も、進め方も、すべてが「ケースバイケース」です。
だからこそ、「いつ」「誰に」相談すればよいのかが分からず、検討が止まってしまうことも少なくありません。
ここでは、迷ったときの考え方と、私たちができることをご紹介します。
1)こんなときは、早めの相談が効果的
まずは、建物の現況を客観的に捉え、今後の使い方や課題とセットで整理します。
・どこを直すべきか、自分たちでは判断しきれない
・老朽化が気になるが、改修か建替えか迷っている
・たくさんの関係者の意見がまとまらない
・そもそも何から手をつけてよいか分からない
こうした「初期段階のモヤモヤ」や「分からないことによる不安」があると、時間ばかりが過ぎ、判断や準備が後手に回ってしまいがちです。
少しでも不安や迷いがあるときこそ、専門家の視点で全体を整理してもらうことで、プロジェクトは前に進みやすくなります。
2)「発注者の立場」で支援するパートナーの存在
特に複雑な条件や大規模施設、関係者の多いプロジェクトでは、発注者の想いを理解し、客観的に全体を整えてくれる「中立的な立場の専門家」が大きな力になります。
・目的や条件の整理、計画の見える化
・社内説明に向けた資料づくりや協議事項の整理
・設計・施工者の選定支援
・コストや工程の最適化に向けた比較検討
・実施設計や施工段階での判断支援
NCMのようなコンストラクション・マネジメント会社(CM会社)は、発注者の立場でこれらの支援を行う「発注者のパートナー」です。
3)NCMは、どんな段階からでもご相談をお受けしています
私たち日建設計コンストラクション・マネジメント(NCM)は、新築・改修を問わず、建築プロジェクトの初期段階から運用フェーズまでを通して、発注者の立場で一貫してご支援しています。
「まだ検討を始めたばかりで、何から考えればいいか分からない」
「改修すべきかどうか、そもそも判断に迷っている」
「建築の進め方自体がわからない」
そんな段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。
一つひとつの疑問に丁寧に向き合いながら、最適な進め方をご提案いたします。
CONTACT
お問い合わせ
建設プロジェクトに関するあらゆる疑問にお答えします。
お気軽にお問い合わせください。
メールでのお問い合わせ
お問い合わせはこちらお電話でのお問い合わせ
Tel. 03-5803-9770 平日9時10分〜18時10分RECRUIT
採用情報
NCMは、総合マネジメントファームのメンバーとして、
ともに未来をつくっていくための人材を募集しています。
