なぜ建設コストは変動するのか?最後まで確定しない理由と対処法

建設プロジェクトを担当していると、他の業種とは違う「コストの分かりにくさ」に直面することはないでしょうか。

例えば

「いつの間にか予算が大幅にオーバーしていた」
「そもそも、いくらかかるか最後まで分からない」
「その金額が妥当なのか、自信を持って判断できない」

といった悩みは、多くの発注者に共通する声です。

このページでは、「なぜ建設コストは高くなるのか」「なぜ金額が最後まで見えにくいのか」といった疑問にお答えしながら、予算の不安を軽減し、見通しを立てやすくするための考え方をご紹介します。

建築の専門家でなくても理解できるよう、順を追って分かりやすく整理していますので、ぜひ参考にしてみてください。

01 なぜ建設コストは「見えにくい」のか?

建設プロジェクトに携わると、他の業種と比べて「コストがなかなか確定しない」、「見積の根拠が分かりにくい」と感じることはないでしょうか。

その大きな理由の一つは、設計や仕様が完全に固まる前にプロジェクトが進み始めるため、設計段階や工事段階の一つひとつ仕様確定して進めていくためコスト変動が生じやすいという、建設業界特有の進め方にあります。
加えて、資材価格や人件費の変動等、外部環境の影響を受けやすいという特徴も、コストが見通しにくい要因となっています。

1)要件が最初から全て決まっていない

建物の用途や延床面積が大まかに決まっていても、具体的な間取りや内装の仕上げ、外装デザイン、設備機器の仕様等は、計画が進むなかで徐々に具体化して、明らかになっていきます。
つまり、「つくるもの」が少しずつ決まり、それに応じて「必要な費用」も変わるのです。

2)物価や資材費の変動が激しい

建設費には、鉄骨やコンクリート、断熱材等の資材価格、電気・空調・衛生設備の機器の価格、そして人件費(労務費)が大きく影響します。
これらは世界情勢や為替、物流等の影響を受けやすく、数か月で大きく変動することもあります。
また、国内の人手不足の影響で労務費も変動しやすい傾向にあります。

設計段階と工事を発注する時期が、数ヶ月以上異なることによって、価格が変動することも珍しくありません。

3) 建設業界はその段階の「暫定金額」「変更契約」で進めることがある

実施設計が全て完了する前に施工会社と契約を結ぶケースでは、「一部費用を暫定契約し、後から精算する」方式がとられることもあります。
また、工事中に仕様変更や設計変更が発生、地中障害物等で追加工事の発生等、契約後も追加契約によって費用が変動するのも一般的です。

このように、建設の予算が見えにくい背景には、建設プロジェクトでは「最初に全てを決めてからスタートする」という進め方が難しく、計画の途中で仕様や条件が固まっていくケースが多く見られます。
そのため、予算の不確定さは「例外」ではなく、「前提」として捉えることが大切です。

02 どこで膨らむ?――よくあるコスト増の原因

建設プロジェクトでよくあるのが、「想定以上にコストが高くなった…」、「気づいたら予算オーバーしていた…」という事態です。
この章では、発注者が注意しておきたい「コスト増の代表的なパターン」を整理し、なぜそれが起こるのかを解説します。

1)設計変更による増額

プロジェクトが進むなかで、

・社内方針の変更(組織改編や運用方針の変更等)
・要望の追加(会議室の増設、仕上げ材のグレードアップ、設備の追加要望等)
・設計の一部見直し(デザインや動線、設備の調整等)

こうした設計変更は、その都度、設計図書の変更・工事範囲・数量・工期にも影響を与えるため、その変更が大きいほど、金額が大きく動く要因になります。特に実施設計後や工事発注後の変更はコストインパクトが大きくなる傾向があります。

2)見えない部分での「予期せぬ条件」

建設は地面の下や既存建物の中等、見えない要素も多く含みます。

・地中障害物(埋設物、旧基礎、岩盤等)
・既存図面と現況の不一致
・土壌汚染やアスベスト等の有害物質の発見

こうした目に見えない部分の想定外は、着工後の調査や解体で判明することがあり、工程変更や追加工事につながります。

3)建設資材や人件費の市況変動

建設コストは国内外の様々な市況の影響を受けます。

・資材価格の価格変動(鉄骨・コンクリート・仕上げ材等)
・設備機器の納期遅延や価格変動
・人手不足による人件費(労務費)や輸送費の変動

設計段階と工事契約までの期間や、実際に工事を行うまで期間が離れるほど、見積との差が大きくなるリスクがあります。

4)見積内容の違い

施工会社からの見積を確認する際に、次のようなケースは少なくありません。

・発注者や設計者の想定と施工者の捉え方に違いがある
・複数社の見積を比較した際に、施工方法や見積の項目・単価・数量に差があり単純比較が難しい

こうした場合、見積の項目・内容・金額を単純に比較することができず、詳細な確認や再調整に多くの時間を要します。
その結果、意思決定が遅れたり、条件の食い違いによって想定外の追加コストが発生したりするリスクも高まります。

5)コスト増は「誰かのミス」ではない

ここまで見てきたようなコスト増の要因は、誰かのミスによって起こるわけではありません。
建設プロジェクトは「一品一様」の受注生産であり、計画を進めながら仕様や条件が徐々に固まっていくという特性があります。
このような構造的な不確実性こそが、コストが増える背景にある根本的な原因です。

だからこそ、「なぜ増えるのか」という仕組みをあらかじめ理解し、適切に備えておくことが、予算超過を防ぐための第一歩になります。

03 「最終金額が見えない」理由とは?――建設特有の構造を知る

建設プロジェクトに携わると、多くの方が一度はこう感じる方が多いです。
「いつになったら、最終の工事金額が分かるのだろう?」

この不安の背景には、建設業界に特有の「金額が最後まで確定しにくい構造」があります。
ここでは、その理由を紐解いていきます。

1)実施設計ができてから「正確な見積」が出せる

建設のコストは、詳細な設計図(実施設計)が揃って、はじめて数量や仕様が明確になります。つまり、初期の概算見積ではあくまで仮の条件を前提としているため、精度には限界があります。
そのため、実施設計で詳細が確定したあとに、工事契約に向けた精度の高い見積額が提示されることが一般的です。

2)工事契約後でも、変更が発生する

契約締結後も、以下のような事情でコストは動きます。

・設計や仕様の変更(例:会議室の部屋数の変更、内装仕上げ変更等)
・地中や既存構造の予期せぬ発見(例:埋設物、老朽部分の劣化)
・外部要因による価格変動(例:資材費高騰、労務費の上昇)

これにより、「契約時点の金額」と「実際の最終金額」に差が出ることは珍しくありません。増額だけでなく、調整によって減額されるケースもあります。

3)設備・建材の価格変動や納期遅延により、再調整が発生する

たとえ見積段階で価格が提示されていても、実際に資材や設備を発注するタイミングでは、価格や納期が変わっていることがあります。

例えば、

・メーカーが商品の廃番・生産中止を決定
・発注の集中等による納期遅延
・価格改定による費用の変動

といった事態が起こると、当初予定していた製品が使えず、代替品の選定 → 設計変更 → 再見積といった「再調整」が発生します。
このように、調達の段階で初めてわかる変動要因が、工事費の確定を後ろ倒しにする要因となるのです。

04 コストを「管理する」という考え方――計画から完成までの視点

建設プロジェクトのコストは、最初に金額を「守る」というよりも、「段階的に調整しながら管理する」という考え方が重要です。予算を確実にコントロールするためには、完成直前の見積ではなく、企画・計画段階からの情報整理と意思決定の積み重ねがカギを握ります。

1)「最初の予算」が不明確なまま進まないようにする

計画初期の段階で、次のような基本方針を整理しておくことが、あとのコスト増加を防ぐうえで効果的です。

・使用できる予算の上限と予備費の設定
・優先すべき要素の明確化(例:広さ、デザイン、設備性能等)
・どの程度まで仕様変更や追加を許容するかの判断基準

「何を大切にするか」が曖昧なまま設計や検討が進むと、あとで方向修正が必要になり、結果としてコストと時間のロスにつながるリスクが高まります。

2) 設計とコストを並行して見ていく

設計が進むにつれて、建物の内容は詳細になります。ここで重要なのは、「設計が完成したあとで見積」ではなく、設計の段階ごとに、その都度コストの見通しを確認しておくことです。

・基本設計の段階で概算費用を確認
・実施設計時に詳細な見積を確認
・入札・契約前に精査・調整

このように段階的に把握することで、大きなズレや後戻りを防ぐことができます。
特に基本設計の段階での決定事項は、コストやスケジュールに大きく影響します。
関係者の共通認識をつくり、スムーズに進めるためにも大切なコストの確認タイミングです。​

3)発注方式や目的に合わせた設計見直し等柔軟対応を

コスト管理のためには、柔軟な考え方と選択肢を持つことも大切です。

・発注方式の工夫
設計と施工を分離して発注することで、見積の透明性と比較性を高めることが可能になります。
一方で、設計と施工を同じ会社に一括で発注すると、設計段階から工事費の確認がしやすくなります。

・VE(Value Engineering)の活用
機能や品質を維持・向上させたまま、コストを合理的に削減する手法です。
目的や状況に応じて「削る」のではなく、価値を維持しながら調整するという視点が求められます。

4) コスト管理の鍵は「情報の見える化」

関係者全員が「同じ情報を見て、理解している状態」をつくることが、コスト管理の精度と透明性、納得感を高めます。

・コストの構成要素(内訳)を可視化する
・増減理由を明確に説明できるようにする
・情報共有のタイミングや資料の整備を意識する

「なぜこの金額なのか」が分かることで、社内外の調整もスムーズになり、意思決定のスピードと精度が向上します。

05 専門家に相談することで変わること ―― コスト管理の“伴走者”を持つ

ここまでご紹介してきたように、建設プロジェクトでは「なぜコストが高くなるのか?」「なぜ最後まで確定しないのか?」という不安や疑問には、建設業界ならではの背景や仕組み、進め方があります。

しかし、それら全てを発注者自身で背負う必要はありません。
適切なタイミングで専門家に相談することで、不安や混乱を防ぎ、よりよい判断ができるようになります。

1) 発注者だけでコストをコントロールするのは難しい

建設プロジェクトでは、以下のような複雑な調整や判断が求められます。

・設計・施工内容の専門的な内容の理解
・社内ニーズと予算のすり合わせ
・複数の見積の比較検討・妥当性の判断
・スケジュールや品質とのバランス調整

これらを、日常業務と並行して一人で行うのは大きな負担です。
特に建設に不慣れな場合、判断に迷う場面が多くなり、時間やコストのロスにもつながりやすくなります。

2) 透明性がある第三者的な立場の専門家に相談する方法もあります

第三者の立場で支援するコンストラクション・マネジメント(CM)は、発注者の立場で、プロジェクト全体を支援する専門的なマネジメント手法です。
NCMは、以下のような場面でコストに関する支援を行っています。

・企画段階からのコスト見通しの支援
・設計内容とコストのバランスの調整支援
・複数社の見積内容の精査と妥当性の確認
・工事中のコスト変動の対応方針の助言

発注者に、中立的な立場で判断材料を整理し選択肢を提示し、最適な選択を支援するのがCMの役割です。

3)まだ漠然としている段階からでもご相談ください

・建設コストが妥当かどうか分からない
・このまま進めてよいか不安
・社内で合意を得られる説明ができない
・まだ計画が漠然としているけれど話を聞いてみたい

そんなお悩みが出てきたら、早めにご相談いただくことをおすすめします。
特に初期段階での相談は、あとのコスト増加や判断の行き詰まりを防ぐ効果があります。

建設にまつわる不安や複雑な意思決定に、ひとりで悩む必要はありません。
計画の初期から丁寧に情報を整理し、信頼できる専門家に相談することで、無理や無駄のないプロジェクトを実現することができます。

私たちNCMは、発注者の立場で、建設の「分かりにくさ」を一緒に整理するパートナーです。迷いや不安があれば、まずはお気軽にご相談ください。

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