なぜ建設スケジュールは伸びやすいのか?予定通りに進まない理由と、発注者にできる備え
建設プロジェクトでは、スケジュールが予定通りに進まないケースも少なくありません。その背景には、設計や施工、調整における様々な要因があります。このページでは、「なぜ工期が延びてしまうのか?」という疑問に対して、あらかじめ知っておきたいポイントと備え方をご紹介します。
01 なぜスケジュールが「予定通り」に進まないのか?
建設プロジェクトは多くの工程と関係者が関わり、長期にわたるため、「思ったよりも時間がかかる」という声がよく聞かれます。
これは、段取りのミスや関係者の調整不足だけが原因ではなく、建設業界ならではの構造的な事情や、予測の難しい外部要因が影響していることも多くあります。
1)計画と現場には「ズレ」が生じやすい
計画時には順調に見えたスケジュールも、現場では様々な理由で想定通りに進まなくなることがあります。
例えば
・地中障害や既存建物の不具合等、目に見えない部分での想定外
・近隣施設・関係者との調整に時間を要する
・台風や地震等自然災害リスク
・社会情勢や物流の影響による建設資材・設備機器の納期遅延や価格変動
・建物のデザインや仕様が決まらない
・事業計画の変更による設計の見直し
これらの要因は、どれだけ準備をしていても完全にコントロールするのが難しく、結果としてスケジュールに影響を及ぼします。
2)設計から工事発注までの「見えにくい工程」が意外と長い
関係者が多い建物や公共性の高い建物、大規模施設では、
・設計者や施工者の選定(入札・プロポーザル)
・各種審査・申請・許認可の取得
・経営者や議会の承認を得て進めるために各種会議での協議
等、設計から工事発注までのプロセスでも相応の期間が必要です。
このような「見えづらい工程」がスケジュールに影響していることを知らないと、「なぜ遅れているのか分からない」といった不安にもつながります。
3)現実的な見通しがカギ
大切なのは、「理想的なスケジュール」を守ることではなく、現実的を踏まえたスケジュールを立て、柔軟に対応できる体制を整えることです。
スケジュールが「ずれる可能性がある」という前提で、早い段階からそのリスクを理解し、対策を講じておくことが、プロジェクトを順調に進める方法です。
次章では、具体的にどのような遅延要因があるのかを詳しくご紹介します。
02 よくある遅延の原因とは?
建設プロジェクトの遅延には、個別の事情もありますが、多くの現場で共通して見られる「遅延の主な原因」がいくつかあります。
ここでは、発注者の立場で特に注意しておきたいポイントをご紹介します。
1)設計変更や仕様の見直し
プロジェクトが進むなかで、
・やっぱりこうしたい
・最新の設備を導入したい
・仕上げ材のグレードを変えたい
・会議室を増やしたい
・将来の従業員想定を増加させたい
といった要望が出てくるのは自然なことです。
一般的に人生の中で建物の隅々から建設までを考える機会が少ない人が多いため、発注者自身も検討を重ねることで、より具体的なニーズに気づいていくものです。さらに発注者の組織や事業も変化するため、建設プロジェクト開始時点から要望が一部変更されることもあります。
しかし、こうした見直しが発生するたびに、再検討・調整・承認・発注のやり直しが発生します。結果として、スケジュールにも少なからず影響を与えることになります。
2)想定外の地中や既存建物の状況
既存建物の改修や建替えでは、解体時に「地中障害物」や「想定外の劣化」等が見つかることがあります。
例えば
・古い基礎や埋設物の発見
・図面と現況の不一致
・アスベスト等法規制対象の素材の発見
こうしたケースでは、調査・撤去・設計変更が必要となり、工程にも影響を与えます。
実際にあった事例では、工事開始後に、既存図書に無い地中障害物が見つかり、撤去することとなりました。撤去作業の期間によってスケジュールが延伸し、撤去の検討や撤去作業の人件費や機器の手配、処分費等でコストが増額しました。
3)周辺環境や近隣対応
都市部での工事や稼働中の施設での工事では、
・ 騒音・振動への配慮
・ 搬入経路や作業時間の制限
・ 近隣施設との調整や安全対策
といった「現場外」の制約も、スケジュールに影響を与えます。
例えば、近隣に住宅地がある場合、夕方以降に騒音・振動が発生する工事は控え、通勤・通学時間帯の大型車両の搬入は避ける等、近隣への影響を考慮した工事計画が必要となります。
4)資材・設備の納期遅延
近年では、グローバルなサプライチェーンの影響や需要の集中により、特定の建材や設備が手配しづらくなる事例も増えています。特に特殊な設備を用いるプロジェクトでは、納期が工程全体に影響することがあります。
例えば、納期まで時間を要する特殊機器の場合、設計段階の初期段階で発注が必要となる場合があります。建物の全体レイアウトの検討段階で、特殊機器を使用する部屋の条件や要望をまとめる必要があります。
5)天候や自然災害
屋外作業が多い建設現場では、
・大雨・台風・猛暑・積雪
・地震等の自然災害
といった天候リスクも無視できません。安全確保を優先するために作業を中止し、工程を調整せざるを得ない場面もあります。
これらの遅延は「誰かの失敗」ではなく、構造的・環境的に避けがたいリスクであることが多いです。全てを事前に完全回避することは難しく、また過剰な準備はコストや時間を要するため、「どう備えるか」が重要です。
次章では、こうした遅れのリスクに対して、発注者としてどのように備え、スムーズな進行を実現していくかをご紹介します。
03 スケジュールを乱さないためにできること――「前倒し」と「見える化」がカギ
「工期が延びるのには原因がある」と、あらかじめ起こりやすい遅延リスクを想定し、備えることが重要です。
ここでは、発注者ができる「スケジュール遅延の予防策」を3つの視点からご紹介します。
1)初期段階の「曖昧な部分」を早めに整理する
プロジェクトの初期は、まだ要件が固まりきっていないことも多いです。
・目的や使い方が抽象的なまま進んでいる
・優先順位が明確になっていない
・内部での合意形成が不十分
といった「曖昧な状態」を残したまま進めてしまうと、後々の設計変更や仕様見直しにつながり、スケジュールに大きな影響を及ぼします。
そのためにも、以下のような「初期の調整」や「関係者とのすり合わせ」が効果的です。
・プロジェクトの目的や要望を可視化する
・優先順位を共有し、判断基準を整理しておく
・社内関係者との合意形成を早い段階で図る
2)スケジュールは「柔軟に管理する」
実際のプロジェクトでは、全てが工程表通りに進むとは限りません。
そのため、「スケジュールは一度決めたら守る」だけではなく、状況に応じて「調整し続けるもの」として運用する意識が重要です。
・定期的にスケジュールの進捗をチェックする
・類似プロジェクトのリスク事例を事前に学び備える
・詳細なスケジュールを作成しスケジュール通りに進捗しているか確認・調整する
こうしたスケジュール管理は安定的に進めるための基本姿勢です。
3)関係者との連携を先手で行う
建設プロジェクトには、設計者・施工者・専門業者・行政・利用者等多くの関係者が関わります。情報共有が遅れたり、調整が不足したりすると、どんなに完璧な計画でも滞りが生じてしまいます。
・キーパーソンを早期に特定して、早めに相談を開始する
・社内の承認フローやスケジュールを事前に確認
・デザイン方針やレイアウト等、時間を要するテーマは早期検討
特に外観のデザイン方針やオフィスレイアウト等、建物の重要事項は時間を要することが多く、段階的に決まることもあります。
現場での遅れだけでなく、発注者の準備・調整が鍵を握るという視点がとても重要です。「どこで時間がかかりそうか」を事前に予測し、先手の調整を行うことが、全体を通じた進行の安定につながります。
次章では、こうした準備や調整を、どうプロジェクト全体でマネジメントするか、考え方をご紹介します。
04 全体を俯瞰した「スケジュールマネジメント」の考え方―― 小さな遅れを、全体の混乱にしないために
建設プロジェクトは「企画・計画 → 設計 → 施工 → 引き渡し → 運用」まで、多くの工程が連続的につながっています。それぞれを「個別の作業」ではなく、「全体の流れ」として俯瞰しながら管理するのが、スケジュールマネジメントの基本的な考え方です。
1)「遅れの連鎖」を防ぐ視点
スケジュールマネジメントでは、こうした影響を予測して、次のような視点で全体への影響を見える化します。
・どの作業が全体に与える影響が大きいか(クリティカルパスの特定)
・どこにバッファを設けておくべきか(リスク分散)
「どの工程がボトルネックになるか」を見極め、早期に手を打つことが全体の安定につながります。
2)スケジュール表の活用が重要
スケジュール表は、ただ作成するだけでは機能しません。
本当に重要なのは、そのあと、状況に応じて柔軟に活用していくことが重要です。
・どの工程が終わらないと次に進めないのか、工程ごとの「前後関係」を明確化
・週ごと・月ごとに進捗を確認し、遅れや変更に応じて早期対応を図る
・設計・施工・発注者等、関係者全員で同じ工程表を見ながら進捗状況を共有する
このように、工程表は「現場の変化を前提に柔軟に使用するツール」と考えることが大切です。また「共通認識をつくる場」が、スケジュールの混乱を防ぎ、安定した進行につながります。状況を見える化し、共有できる体制が、結果としてスケジュールの乱れを最小限に抑えます。
3)スケジュール管理におけるコンストラクション・マネジメントの役割
スケジュールマネジメントは、単に「工期を守る」ためだけの手法ではありません。
発注者に代わってプロジェクト全体の流れを整理し、必要な調整や判断を支援する。
―― それが、コンストラクション・マネジメント(CM)の役割です。
・工程全体の最適な計画と進行管理
・設計・施工の調整や優先順位の見極め
・遅れや変更への対応に対する提案と助言
中立的な立場からプロジェクト全体を見渡し、「全体のつながり」や「判断のタイミング」を適切にマネジメントすることで、スムーズにプロジェクトが進行します。こうした第三者の視点が、スケジュールの見通しと発注者の安心感につながります。
05 想定外を、想定内に変える準備力を
「スケジュール通りに完成させたい」という想いは、全ての発注者にとっても共通の想いです。
しかし、長期間にわたるプロジェクトは、多くの関係者が関わるため、想定外の出来事が起こり得ます。
だからこそ大切なのは、「スケジュールを守る」ことに加えて、「変化に対応できる準備」です。
1)変化を前提としたスケジュール管理を
建設プロジェクトでは、スケジュール通りに進まないこともあることを受け止めましょう。重要なのは、想定外のことが起こることを前提に、柔軟に判断しながら前に進める力です。
そのためには次のような準備が欠かせません。
・計画段階からの情報整理と意思決定の明確化
・スケジュールの「見える化」と進捗確認
・関係者間の密な連携と調整体制
よい建物は、発注者・設計者・施工者全ての関係者の協力によって生まれるものです。柔軟な姿勢が、結果として安定したプロジェクト進行を支えます。
2)外部パートナーとの連携で負担を軽減
スケジュール遅延のリスクが高まる場面では、発注者に求められる判断や調整も増えます。
特に設計者や施工者とタイムリーに相談し、社内外の多くの関係者と同時並行で調整していくことは負担が大きいです。
例えば
・多岐にわたる関係者の調整や合意形成の支援
・適正なスケジュールのための確認や代替案の検討
・リスク要因の早期発見と、先回りした調整
こうしたときこそ、第三者の視点でプロジェクト全体をマネジメントできるパートナーの存在が心強い支えとなります。
3)初期段階での不安やリスクを可視化する
「今の計画で本当に間に合うのか?」
「どこにリスクが潜んでいるのか?」
そんな迷いや不安を感じたときこそ、準備を始めるタイミングです。
まずは、
・計画の整理や見直し
・リスクの洗い出しと対応の優先順位づけ
・工程の全体像の整理と関係者の巻き込み
こうした準備は、早ければ早いほど効果を発揮します。
「スケジュールを守る」ではなく、「想定外を想定内にする」という考え方が、プロジェクト成功への第一歩になります。
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