複合施設の動線設計とは?計画が難しい理由とポイントをわかりやすく解説
2025.09.04 Thu
CM(コンストラクション・マネジメント)

都市部を中心に、複数の用途が一体となった「複合施設」が増えています。
複合施設は、オフィスや商業、ホテルなど複数の用途が一つの建物に共存することで利便性が高いといったメリットがある一方で、計画や設計・運用には単用途の施設に比べて複雑になります。用途が増えるほど、利用者やサービスの動きが重なり、建物の快適性や事業性に大きく影響します。
その中でも重要な鍵となるのが「動線」です。用途ごとの動線に加え、複数用途を貫く“共用動線”が生まれることで、計画の難易度は一気に上昇します。
本コラムでは、複合施設における“動線計画の難しさ”に着目し、押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
複合施設とは
複合施設とは、複数の異なる用途や機能の施設を1つの建物や敷地に集約した施設のことです。「オフィス+商業+ホテル」や、「住宅+商業・公益施設」といった多様な用途が一体となった施設などを指します。
建物の用途が1つだけ(単用途)の建物であれば、事例も豊富で、イメージや計画の見通しも比較的立てやすいものです。しかし、用途が二つ以上重なり、とくに利用形態や運用が異なる機能が組み合わさると、計画の難易度は一気に上がります。
複合施設が単用途より難しくなる理由
複合施設は、平面的に用途を分割し、それぞれを個別に計画できる場合はまだ複雑度が低く保てます。
しかし、用途が複数の階にまたがるなど“積層”される複合施設の場合、計画・調整のハードルが大幅に上がります。
単用途では成立していた「利用者用動線(表動線)」と「運用・サービス動線(裏)動線」の整理が、複合化により一気に複雑になるためです。
なぜ複合施設の計画では「動線」が最重要なのか
単用途の施設であれば、運用時間・セキュリティの要件も含め、表動線・裏動線の整理によって比較的明快に計画できます。
しかし複合施設では、各用途それぞれが必要とする動線に加え、各用途につながる「共用動線」が新たに発生します。例えば、建物エントランスやエレベーター、トイレ、従業員用の出入り口、搬入動線などです。
この共用動線は館内移動や物流を支える重要な要素ですが、用途ごとの動線が混在するため、建物全体の稼働上限を決めるボトルネックになりやすいという特性があります。
“専用動線を用途ごとに設ける”では解決しない理由
「用途ごとに専用動線をつくれば良いのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、用途ごとに専用動線を設ける場合は
・動線を形成するためのスペースやコストが増加する
・積層型の複合施設では平面有効率を大きく下げる
・事業性にもマイナス影響が大きい
といった課題があります。
このため、専用動線を設けることが最適解ではない点が複合施設の難しさの一つです。
複合施設の動線計画に必要な視点
複合施設の動線を最適化するには、バランスよく整理することが重要です。
一例を3つ紹介します。
1)各用途の利便性(サービスレベル)
利用者・テナント・サービスごとの動きや要求を理解し、必要な動線を整理します。
2) 事業性(収益性)
動線計画によるスペース効率やコスト構造が、事業性に直結します。
3)運用を踏まえた共用動線の設定
共用動線の利用時間や利用者数、夜間利用等、運用の詳細が計画に大きな影響を与えます。
複合施設に“共通の正解”が無い理由
建物を構成する用途の種類や、各用途の規模、施設のグレード、利用ピーク時間帯、運用方針などによって、動線計画の最適解は変わります。また建物周辺の環境や条件も考慮する必要があります。
つまり、複合施設には、すべてに当てはまる「共通解」はありません。
プロジェクトごとに計画・運用・コスト・事業性を総合的に整理し、最適な構成をつくるプロセスが重要となります。
複雑さの先にある、複合施設プロジェクトの面白さ
複合施設の動線計画は、一見すると手間のかかる作業に思えるかもしれません。
しかし、この検討こそが施設の快適性をつくり、利便性や事業性まで左右する重要なプロセスです。
だからこそ一つひとつの整理には手応えがあり、複雑さも含めて「解きほぐしていく面白さ」を感じながら取り組んでいます。