コンストラクション・マネジメントとは?
意味や概要をわかりやすく解説

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オフィスや商業施設、工場や研究所、学校、医療施設、ホテルなどの建設プロジェクトでは、基本計画段階から竣工まで多数のステップを踏んでいく必要があります。プロジェクトの規模が大きいほどそのプロセスは複雑になり、さまざまな悩みが生じることもあるはずです。そうした問題を解決し、建設プロジェクトを成功に導くカギとなるのが、「コンストラクション・マネジメント(CM)方式」の導入です。
ここでは、コンストラクション・マネジメントとは何か、その歴史、導入の流れなど、コンストラクション・マネジメントの基本を詳しく解説します。

コンストラクション・マネジメント(CM)とは

コンストラクション・マネジメント(Construction Management、略称:CM)とは、建設プロジェクトを成功に導くため、専門性の高いコンストラクション・マネジャー(CMr)が技術的な中立性を保ちつつ、発注者の立場に立ってそのプロジェクトの事業構想・企画・計画から設計・発注・施工・維持管理の各段階において、プロジェクト運営、品質管理、コスト管理、スケジュール管理などのマネジメント業務を行うことです。​
「コンストラクション・マネジャー(CMr)」と呼ばれる立場の人が実際にそのマネジメント業務を行います。

例えば、A社が事業拡大のために新しく工場の建設を計画しているとします。その場合、A社は「発注者」として、設計を依頼する「設計者」と工事を依頼する「施工者」の双方と「設計業務委託契約」や「工事請負契約」を締結しなくてはいけません。ところが、A社側が建設事業の経験が少なく専門的な知識を持っていない場合、設計者や施工者と同じレベルでの協議、コミュニケーションが難しいため、発注者の意図しない方向に事業が進んでしまうなどといったリスクが想定されます。そうした事態を避けるために、発注者側に立った技術的な補完を行うのが「コンストラクション・マネジメント」です。

コンストラクション・マネジメント(CM)の歴史

コンストラクション・マネジメントは、アメリカで誕生し発展を遂げた建築生産・管理システムで、その起源は1940年代とされています。もともとは産業革命期に製造業でマネジメント技術が進化したのが始まりですが、後に建築産業でも採用されるようになっていきました。

その後、1960年代に産業発展によってプロジェクトが複雑化し、発注者の負担が大きくなってきたことから、コンストラクション・マネジメント方式を採用するケースが少しずつ増えていきます。1970年には大型高層ビルの建設時にコンストラクション・マネジメント方式の高い効果が実証されたことなどもあり、アメリカ国内での導入が加速していきました。

一方、日本でコンストラクション・マネジメントが注目されるようになったのは、1980年後半に入ってから。バブル期で国内の大手ゼネコンの建設プロジェクトが急速に大規模・複雑化したのがきっかけでした。その後のバブル崩壊によって再度停滞を見せますが、1990年代後半にはコンストラクション・マネジメント方式を採用する企業が現れ始め、徐々に広がっていきました。

2000年以降は国土交通省が研究会を発足させ、海外に調査団を送るなどの積極的な動きも見られ、2001年には日本コンストラクション・マネジメント協会が発足。2002年には国土交通省による「CM方式活用ガイドライン」が発行され、現在では公共事業をはじめさまざまな建設プロジェクトでコンストラクション・マネジメント方式が導入されるようになっています。

コンストラクション・マネジメント(CM)方式によるプロジェクトの流れ

建設プロジェクトでは、基本構想から基本計画、設計・施工業者の選定、設計マネジメント、施工マネジメントなどさまざまな業務が発生します。コンストラクション・マネジメント方式は基本的にどのフェーズからでも導入することができますが、早くから導入することで安定したコストやクオリティを維持しながらプロジェクトを進めていくことが可能です。
では、具体的なプロジェクトの流れをそれぞれのフェーズごとに見ていきましょう。

1.企画フェーズ

事業方針や全体工程、事業予算はじめ、発注方式の検討、社内外向け説明資料の整備など事業計画を策定していきます。

2.設計者選定フェーズ

設計者選定方法の提示、参加者の募集、評価方法の立案、評価、設計業者との契約内容の確認などをコンストラクション・マネジャー(CMr)がサポートします。

3.設計フェーズ

設計者から提示された見積書を細部まで確認し、必要であればコストダウンや設計改善を提案し、設計コストの管理を行います。

4.施工者選定フェーズ

発注方式を検討・提案し、見積書の内容を確認、価格交渉、工事請負契約内容の確認など、ゼネコンの選定や発注のマネジメントを行います。

5.工事フェーズ

工事の進捗状況を確認し、追加工事が発生した場合の見積内容の確認、竣工検査への立会いを行っていきます。

コンストラクション・マネジメントは初期段階で採用するほどその効果は大きくなります。建設プロジェクト立ち上げる際には、ぜひコンストラクション・マネジメント方式の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
コンストラクション・マネジメントについて、さらに詳しく知りたい!という方は、「コンストラクション・マネジメント(CM)方式のメリット」の記事も併せてご覧ください。

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