相鉄グループが横浜市泉区で進める街づくり
大規模商業施設「ゆめが丘ソラトス」が地域活性化に貢献

相鉄アーバンクリエイツ×日建設計コンストラクション・マネジメント

横浜市北西部の泉区で2024年7月25日に開業した大規模商業施設「ゆめが丘ソラトス」。相模鉄道いずみ野線ゆめが丘駅に直結し、横浜市営地下鉄ブルーライン下飯田駅からも徒歩1分と交通アクセスに優れた場所に位置しています。
地域最大規模(延床面積約105,000㎡)を誇る施設の1階は食の体験を通じて地域をつなぐフロアとして、地元の生産者との触れ合いを重視した店舗が並びます。2階にはファッションやライフスタイル関連のショップが集結し、3階には大型の映画館やアミューズメントパーク、フードコートを配置。屋上には、遊具を取り揃えた広場を開場しています。地域交流の推進や子育て支援をはじめ、太陽光パネルの設置や廃棄物の再資源化といった循環型社会への取り組みにも力を入れる、地域に根差した大規模集客施設として注目を集めています。
日建設計コンストラクション・マネジメント(以下NCM)は、事業主体である相鉄グループの相鉄アーバンクリエイツに伴走し、プロジェクト管理を支援してきました。今回は、「ゆめが丘ソラトス」のプロジェクトを牽引した相鉄アーバンクリエイツの山本様、鈴木様、小池様、佐藤様を迎え、プロジェクトを担当した榎本、東、熊本とプロジェクトを振り返りました(以下敬称略)。

「ゆめが丘ソラトス」外観 (写真提供:株式会社相鉄アーバンクリエイツ)

相鉄グループの沿線開発を象徴し、地域資源を活かした様々な体験ができる交流型集客施設

相鉄グループにとって今回のプロジェクトはどのような意味合いがありますか。

株式会社相鉄アーバンクリエイツ 山本 栄市(以下山本)
相鉄グループは、鉄道を主軸に快適な暮らしをサポートする事業を通じてお客様の喜びを実現し、地域社会の豊かな発展に貢献することを基本理念に掲げています。相模鉄道は2019年11月にJR線、2023年3月に東急線と相互直通運転を開始し、都心アクセスが向上しました。「ゆめが丘ソラトス」の開業は、「選ばれる沿線」の創造を目指す、相鉄グループのプロジェクトの最終章に位置付ける取り組みで、沿線の魅力となる重要な拠点です。「食」「アクティビティー」「教育・文化」など、さまざまな体験ができる交流型集客施設として、地域活性化に寄与していきたいと考えています。

「ゆめが丘ソラトス」の特徴をご紹介ください。

株式会社相鉄アーバンクリエイツ 鈴木 友之(以下鈴木)
「ゆめが丘ソラトス」がある泉区は、横浜市18区の中でも農地面積が1位、農家数は3位と農業が盛んな地域です。採れたての食材がすぐに届く利点を活かし、厨房や調理器具を備えた1階の「Live Kitchen SORATOS」では、食に特化したイベントを開催しています。テナントが主催する地元野菜を使った料理教室が人気で、メーカーが商品PRの場として使うケースも増えています。2・3階の「SORATOS Room」は地域の交流空間として、催事、展示場、セミナーなど幅広い用途に利用できます。
屋上には、約3,000㎡の広々としたスペースに多彩な遊具を取り揃えた「そうにゃんぱーく そらの広場にゃん」があり、特に休日は多くの親子で賑わっています。また、施設内のすべてのトイレにキッズトイレと授乳室を設けており、パパ・ママにも大変好評です。
地域の魅力を届け、子育て世代をはじめ様々な方々が集まり交流を図ることで、新たなコミュニティがつくられる場となることを期待しています。

「ファーマーズテーブル」をテーマとした、1階の「Live Kitchen SORATOS」

無料で開放する屋上広場の「そうにゃんぱーく そらの広場にゃん」には、相模鉄道キャラクターの「そうにゃん」をモチーフにした遊具が並ぶ

株式会社相鉄アーバンクリエイツ 小池 弦(以下小池)
この地域は、ゆめが丘エリアマネジメント協議会が「WELL-BEING TOWNゆめが丘」を目指して、「食を中心としたサステナブルな社会を体感できるまち」「最先端で安全な暮らしやすいまち」「子育てしやすいまち」「自然・人との交流で健康になれるまち」という4つのコンセプトに基づくエリアマネジメントを行っています。

「ゆめが丘ソラトス」も「最先端で安全」というコンセプトに基づき、物流分野の人手不足や買い物が困難な高齢者への対応、お客様の利便性向上を目的に、自動配送ロボットを導入しました。お客様がアプリから商品を注文すると、ロボットが店舗に向かって商品をピックアップし、公道を移動してお客様の自宅まで商品を配送します。
「食を中心としたサステナブルな社会」の一環としては、店舗から出た生ごみを堆肥化し、近隣の農家に提供しています。将来的には、この肥料で育てた野菜を「Live Kitchen SORATOS」で提供できるような地域密着型の循環システムを目指しています。

商品配送サービスを行うCartken(カートケン)社製の自動配送ロボット。公道の走行にも対応する
(写真提供:株式会社相鉄アーバンクリエイツ)

株式会社相鉄アーバンクリエイツ 佐藤 みなみ(以下佐藤)
私は2024年に新卒で入社し、「ゆめが丘ソラトス」開業の2カ月前にプロジェクトに参加しました。実は、私自身も相鉄線沿線に住んでいて、建設中の様子を目にしていたこともあり、プロジェクトの一員に選ばれた時はとてもうれしかったです。同時に、これだけ大きなプロジェクトを3人のメンバーで動かしていたことに驚きました。開業を間近に控えた現場の緊張感、そして多くの関係者と最後の調整を図る難しさなどを実感し、新入社員ながらとても良い経験をさせてもらったと感謝しています。

地域の交流空間として使用できる2・3階の「SORATOS Room」。絵本の読み聞かせやゲーム体験イベントなどが開催されている

少数精鋭でプロジェクトに臨む相鉄アーバンクリエイツを支えたCMの役割

今回のプロジェクトを少人数で運営した理由を教えてください。

山本
最後は4人となりましたが、プロジェクト発足時のメンバーはわずか2人でした。社内では多くのプロジェクトを同時進行していたため、1つのプロジェクトに人員を多く割けないという事情があったのです。少人数でプロジェクトを運営するには、コンストラクションマネジメント会社の起用が必須の条件でした。候補は複数社ありましたが、どの会社よりもプロジェクトに懸ける熱意が感じられたことが決め手となって、実績も豊富なNCMに依頼しました。

NCM 榎本 拓幸(以下榎本)
コロナ禍に突入してテナント誘致が難航する中、他の商業施設では出店計画自体を見直していましたが、相鉄アーバンクリエイツは当初のコンセプトを守り抜く意志が非常に強かったと感じます。通常なら費用の問題で諦めるような設備でも、なんとか実現しようという姿勢が印象的でした。希望に最大限応えられるよう、NCMも私たち3人がコアメンバーとして役割を分担し、「相鉄アーバンクリエイツの社員になり代わるレベル」での全面的なサポートを提供させていただきました。

NCM 熊本 智子(以下熊本)
NCMがプロジェクトに参加したのは、コロナ禍の真っただ中でした。その後、ウクライナ侵攻や資源価格の高騰も相まって、プロジェクトの見通しが不透明な時期が長く続きました。それでも予定通りに開業できたのは、「ここまでに何を決めなければいけない」という要所をしっかり守っていただけたからです。相鉄アーバンクリエイツ側が少人数だからこそ、役割分担が明確で個人の裁量も大きく、検討事項が上がってから決定に至るまでが非常にスピーディーでした。

NCM 東 義雄(以下東)
様々な大型商業施設の開発プロジェクトに関わってきましたが、これほど短期間で建築から開業まで漕ぎつけたのは初めてです。資材が調達できないという事態も発生し、大きな焦りを感じたこともありました。しかし、どんな状況でも責任者の山本さんは方向性がブレませんでした。プロジェクトのトップがどっしりと構えて進むべき方針を示してくれたことで、相鉄アーバンクリエイツの皆さんも、我々も、動揺することなく自分がやるべきことを着実に進められたのだと思います。

山本
予算内で期日通りにプロジェクトを終えることができたのは、NCMのおかげです。工事を担当するゼネコンの担当者に細やかなヒアリングをして交渉材料を見つけてくれましたし、スケジュール管理や調整、図面のチェックや不足部分の指摘など数多くのフォローもしていただきました。互いの信頼のもと、「言うべきことは言う」関係を築けたことが本当に良かったと思っています。

施設が開業してゆめが丘の人流が変化。地域の持続的な成長に貢献する

プロジェクトを振り返って感想を聞かせてください。

鈴木
長年、ゆめが丘駅は乗降客数が2,000人に満たない駅でしたが、「ゆめが丘ソラトス」ができて一変しました。2025年7月で開業してから1年となりますが、当初の目標以上の来館者数を達成しています。屋上広場や3階のアミューズメント施設は子供連れで賑わい、平日夕方は学校帰りの子供たちが芝生で寝転がるなど、地域の人が「ちょっと寄っていこう」と思える場所になっています。今後は、この賑わいをいかに売上増につなげていけるかが課題です。

左が相鉄線ゆめが丘駅。改札を出ると「ゆめが丘ソラトス」の入り口が目の前に

小池
ゴールデンウィークには、オーガスタミルクファーム(横浜市瀬谷区)という牧場と連携し、牛の乳搾り体験や子牛と触れ合えるイベントを開催しました。今後も、「ゆめが丘ソラトス」ならではのユニークなイベントを開催し、より多くの方に来館していただきたいです。

佐藤
今回初めて伺う話も多く、プロジェクトの経緯や困難だった状況を知ることができました。現在は他の新規開発プロジェクトに携わっていますが、今回のプロジェクトで得た学びを基に、自分の役割をしっかり果たしていきたいと思います。

榎本
振り返ってみると、非常に楽しいプロジェクトでした。大きな壁に直面することがあっても、誰一人置き去りにされることはなく、全員が最後までやり抜こうと踏ん張ることができました。プロジェクトマネジメントやコンストラクションマネジメントを担当する会社として、理想的な運営ができたと自負しています。


一般的に商業施設のデベロッパーは組織が確立していて、コンストラクションマネジメント企業への委託はコスト削減や地元関係者との交渉といった限定的な内容であることが多いのですが、企画から施工までをトータルでお任せいただき、NCMとしても大きな実績を積むことができました。

熊本
地域貢献と利益の追求を両立するというとても難しいプロジェクトでしたが、大きなやりがいを感じました。地域の農家と一体で街をつくる発想は先駆的で、今後の商業施設開発にも活かせると思います。

山本
自動配送ロボットや生ごみの堆肥化、CO₂フリー電力の利用など、循環型社会の実現に向けて新たな試みに挑戦することで、多くのノウハウと知見が得られました。これらは今後の街づくりにも水平展開していきたいと思っています。
長期的には、住民が「この町に住んでいて良かった」と感じられるようにすることが最大の目標です。ゆめが丘の魅力を発信することで移り住む人を増やし、新しい住民同士の交流を生み出していくことが、相鉄アーバンクリエイツができる最大の地域貢献だと考えています。

■プロジェクト概要
名  称:ゆめが丘ソラトス
事業会社:株式会社相鉄アーバンクリエイツ、株式会社相鉄ビルマネジメント
設計・監理:福田組東京本社一級建築士事務所
施  工:福田組・第一建設工業 特定建設工事共同企業体
商環境デザイン基本構想・基本計画・設計監修:乃村工藝社
PM・CM :日建設計コンストラクション・マネジメント
街区面積:全体 44,497.18㎡
延床面積:全体 105,014.94㎡
店舗面積:合計 約43,500㎡
構造規模:ソラトス1/商業棟:S造、地上4階・立駐棟:S造、地上6階 
     ソラトス2/商業棟:S造、地上3階 
     ソラトス3/商業棟:軽量S造、地上1階

記事編集制作:日経BPコンサルティング/原稿執筆:小槌 健太郎/Photo:木村 輝

※掲載内容は2025年時点のものです。

【ゆめが丘ソラトス】
https://www.yumegaoka-soratos.com

【相鉄グループ】
https://www.sotetsu.co.jp

MEMBER’S VOICE

「ゆめが丘ソラトス」プロジェクトに関わることができたことは、私たちNCMにとって大変光栄な経験でした。このプロジェクトは、地域資源を最大限に活かし、地域の皆様と共に新たなコミュニティを築くことを目指して進めてきました。特に、建設現場では多くの課題に直面しましたが、相鉄アーバンクリエイツの皆様と密に連携し、柔軟な対応を心掛けることで、無事に開業を迎えることができました。
私たちが目指したのは、単なる商業施設の開業ではなく、地域の持続可能な発展に寄与する場の創造です。「ゆめが丘ソラトス」が地域の皆様に愛され、訪れる人々に新たな体験を提供し、地域の魅力を発信しながら共に成長していける未来を楽しみにしています。

ディレクター/熊本 智子

ゆめが丘ソラトス |PROJECT

ゆめが丘ソラトス

地域を活性化し、サステナブルな街づくりの中核を担う
大規模商業施設開発のプロジェクトマネジメント