建築用語の発注方式とは? 種類と特徴を解説

建築業界では「発注方式」という言葉が使われています。「発注方式」とは、建築プロジェクトを進める上で、設計業務や工事施工などを専門業者に発注する方法全般を指す建築用語です。発注方式は時代の変化とともに多様化しており、発注者の優先事項やプロジェクト特性に応じて適切に選択することが重要です。
今回の記事では、そんな「発注方式」について解説します。主な種類やそれぞれの特徴についても紹介しますので、参考にしてください。

建築の「発注方式」とは

オフィスビルや工場などの建物の建設や改修・解体、長寿命化を進めるためには、専門業者への発注が必要です。その発注内容・方法は一つではありません。現在はさまざまな発注方式が展開されており、発注者側の要望やプロジェクト方針に合わせて最適な方法を選択できます。

建設プロジェクトのプロセスを大きく分けると、建物の設計を行う「設計段階」と、実際に工事を行う「施工段階」の2つに分けられます。発注方式の検討では、この設計段階と施工段階において、どのように業者に委託し、プロジェクトを進行させるかによって違いが生じます。

発注方式の種類と特徴

ここでは主な3つの発注方式について、その種類と特徴をご紹介します。

1)設計・施工分離発注方式

設計・施工分離発注方式とは、設計業務と工事施工を別々の会社に発注する方式です。例えば、設計を設計事務所に発注し、設計完了後に工事施工を施工会社に発注する方法があります。

設計に高い専門性を持つ設計事務所が担当することで、より理想的なデザインや機能、性能などを反映した計画が立てやすくなる点がメリットに挙げられます。また、複数の建設会社の見積もりを取ることができるため、工事費用の比較検証を行った上で、建設会社を選定できる点も長所の一つです。
一方、設計時に建設会社の知見やノウハウを生かせないため、設計時に想定していたコストが工事発注時に大きく変動する可能性がある点に注意が必要です。また、設計者は施工費用に対するリスクを負わないため、発注者が求めるよりも過剰なデザインや性能にならないよう注意が必要です。

2)デザインビルド方式(DB方式、設計・施工一括発注方式)

デザインビルド方式(Design Build、略称:DB方式)とは、設計・施工一括発注方式のことで、設計・監理業務と、工事施工を一括して同じ会社に発注する方法です。建設プロジェクトによっては、基本設計の段階から建設会社に依頼する場合や、基本設計は設計事務所などに依頼し、実施設計から建設会社に依頼する場合があります。

デザインビルド方式では、設計時から施工者の技術やノウハウを生かすことで、優れた品質の確保や合理的な設計が可能になります。また、先行発注などで全体工期の短縮や、工事を請け負う建設会社がコストを確認することでコスト変動の低減につながります。
一方で、計画から施工までを一つの会社に依頼するため、工事費用の比較検証ができない点や、価格競争によるコストの低減が難しい点があります。また、プロジェクト進行中は品質が確保されているかを見極めるため、発注者側にチェック能力が求められます。

3)ECI方式

ECI方式(Early Contractor Involvement 方式、略称:ECI方式)とは、設計段階で施工者が技術協力として参画し、設計段階で工事施工の数量・仕様を確定した上で工事契約を行う方式です。例えば、設計は設計事務所に発注し、設計段階で施工者が技術協力として関与する場合があげられます。

設計を設計事務所に依頼しながら施工者から提案やアドバイスを受けられるため、現場の技術やノウハウを設計に反映しやすくなります。設計段階から施工計画ができることで、工事段階での設計変更リスクの減少が期待できるなど、設計・施工分離発注方式、デザインビルド方式それぞれのメリットを生かした方法です。
しかし、設計段階で技術協力者の選定を行うことで発注者の負担が増加し、選定後の設計と施工の調整に時間を要する可能性があります。また、設計者が技術協力者の提案を取り入れながら設計を進めるため、責任区分の明確化や、設計者と施工者の提案が相反する場合は調整が必要です。

発注方式を決めるときのポイント

各発注方式によって、設計者、施工者のプロジェクトへの関わり方に違いがあります。ここからは、発注方式を決定する際に重要なポイントについて見ていきましょう。

1)発注者の方針やリソースから選ぶ

建設プロジェクトにおける発注方式は、発注者の方針や資金面、スケジュールなどのリソースを考慮しながら最適な方式を選択することが重要です。
例えば、デザインや機能、性能を確保したい場合や、設計事務所に設計を任せたい場合は、設計・施工分離発注方式も検討しましょう。予算超過やスケジュール遅延をできるだけ避けたい場合は、そのリスクを比較的抑えられるデザインビルド方式、ECI方式を検討してみましょう。設計段階から資機材の調達や施工方法の検討により、コストの把握や全体工期の短縮の検討が可能です。

2)プロジェクトの特性から選ぶ

建設プロジェクトや建設予定の建物の特性に応じて、発注方式を選定することも大切です。
例えば、デザインビルド方式では、施工に関するノウハウや技術が設計に反映されやすく高い施工精度を期待できます。一方、設計者として工事費に対するリスクを負う立場でもあることから、想定しているデザイン・機能・性能などが施工者の視点に偏った設計とならない注意が必要です。そのため、デザイン性や機能性を重視する公共建築、特殊建築物や、建設会社の実績が少ない場合においては、設計事務所に設計を発注する設計・施工分離発注方式も検討しましょう。

3)プロジェクトの進捗管理や予算管理の優先度から選ぶ

プロジェクトを進めたり、予算を管理したりする上で、何を優先するかによって発注方式を選定する視点も重要です。
例えば、プロジェクトスケジュールに余裕がない場合や、使用開始時期が制約条件となっている場合には、設計段階から合理的な施工計画の検討が可能で、設計段階から施工段階への移行がスムーズなデザインビルド方式を検討しましょう。
納得のいく工事発注を行うために複数の建設会社に見積もりを依頼して内容を比較・確認したい場合は、設計・施工分離発注方式も検討しましょう。また「工事費の変動をできるだけ抑えたい」と考える場合は、設計段階から施工者の意見を取り入れられるデザインビルド方式やECI方式が最適です。

建設プロジェクトの発注方式は、発注者の方針に合わせて選択できるように多様化されています。それぞれの方式にメリット・デメリットがあるため、プロジェクトの特性や進行上の優先度を明確にした上で、最適な発注方式を選択することが重要です。

日建設計コンストラクション・マネジメントは、建設プロジェクトにおける発注戦略の立案をサポートするサービスを提供しています。コストと品質のバランスを保ちながら、安全かつ確実に建物を竣工させる目的を達成できるよう、最適な発注区分、発注パッケージ、評価手法、見積参加者の選定などを行い、発注プロセスをサポートいたします。詳細は、発注戦略ページをご参照ください。
その他、建物・不動産に関する各種ご相談は、日建設計コンストラクション・マネジメント(NCM)までお気軽にご相談ください。

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