日本生命 東館新築 CM 業務
ユニット理念に基づく、
設計と施工のインテグレーションによる革新的プロジェクト

日本生命不動産 × 大林組 × NCM

2015年1月に竣工した日本生命東館プロジェクトは、労務がひっ迫する建設状況のなかで、予定より1か月も工期を短縮し竣工を迎えることが出来ました。設計フェーズからユニット化を念頭に置き、施工の合理化を視野に入れた設計を行いました。施工フェーズにおいては、施主(日本生命不動産部)、設計者(日建設計)、施工者(施工JV)がフラットに知恵を出し合い、厳しいながらも前向きなプロジェクト運営が実現しました。NCMは、主に設計と施工のインテグレーションを推進する役割を果たしました。
今回は、施主責任者である池田不動産部長、施工JV林所長に当時を振り返っていただき、プロジェクトについて語っていただきました。

日本生命不動産部長

池田宜之氏

大林組 JV 現場所長

林忠利氏

NCM 社長

水野和則

南西側外観

東側緑道

オフィス内観

基本設計段階から、CMrによる提案で構法の合理化を目指す

水野
今回のプロジェクトの成功要因として、基本設計の初期段階から構法の合理化を目指して、それを設計内容に取り入れていったことが挙げられると思いますが、いかがでしょうか。

池田
合理的な構法は、「建物の設えに無駄がなく、作りやすく安全で、品質の確保、コストダウン、工期も合理化が可能である。」という理念に基づいていて、プロジェクトを円滑に進める上で、大切なポイントとなると思います。

水野
私が設計を担当させていただいた日本生命丸の内ビルの現場を、十数年前に池田さんがご覧になった際、「なぜ基準階の天井裏が各階で異なり、ぐちゃぐちゃになっているのか?」と。当時の池田さんの言葉が今でも耳に残っています。

池田
そういう経験もあって、基本設計時にユニットスラブの提案をNCMから受けて、今回は是非実現させたいと思いました。

日本生命不動産部長 池田宜之氏

ユニットスラブ見上げ

ユニットスラブの揚重

ユニットスラブ検討図(©施行JV)

設備部材取り付け

大林組 JV現場所長 林忠利氏


CM会社から施工方法まで提案されたのは初めてのことでしたので、最初はとても面喰らいました。しかしながらその狙いを伺ううちに腑に落ちたのです。

水野
工事契約はこの構法の採用を前提とし、見事に実現していただきました。


外装SRCの鉄骨・鉄筋も地組みするなど工夫し、工期は当初より1か月程度短縮しました。構造の架構がより画一的であれば、ユニット化率が増えて、さらに効果的であったかもしれませんね。

ユニット化の発想は、空調方式、システム天井、OAフロアまで徹底

水野
天井裏の合理化が、ダクトワークの少ない放射空調方式の採用へも繋がっています。
均一な空調の染みだしと輻射を果たすためのパンチング天井に、アドレスフリーの新開発LED照明を設置しています。

池田
1フロア有効3000㎡という大きなフロアプランと「保険会社の事務工場」という用途にも合致し、非常に合理的な設計に結実しました。

水野
ユニット化の発想はモジュールの理念にもつながり、533mm角のユニット天井、OAフロアの開発にも展開しましたね。

池田
机のレイアウトユニットも含め3200mmモジュールで建物が形成されているので、汎用品である500mm角のユニット天井やOAフロアは、建築モジュールに合っていないばかりか、使い方にもそぐわないのです。例えば床からの配線取り出し口が、机のレイアウトからずれてくるのです。

水野
533mm角のOAフロアは過去には生産されていたのですが、コストの合理化によりメーカーが生産中止しています。ユーザーや設計者の要望とは逆行した流れになっていますね。


いくつものメーカーに生産を打診して、ようやく要求スペックに見合ったものを製作していただけるメーカーを見つけました。今回は岡山のオーエム機器さんが要望に応えてくださいました。

池田
OAフロアで言えば、533mmモジュールを採用したことの他に、配線取り出し口の穴を空調のリターン開口に利用するなど、とても合理的なアイディアが盛り込まれています。

放射空調システム

LED照明とパンチング天井

OA床の配線取り出し口を利用したリターン開口

現場段階の「ブレスト会議」に発注者の部長自ら参画

水野
現場段階では、設計段階に引き続き、部長自ら「ブレスト会議」に出席されました。

池田
発注者、設計者、施工者の担当者がフラットに会議に出席し、英知を結集することはとても効果的だと思います。意思決定が透明化しますし、情報伝達速度も格段に上がります。

水野
各立場の参加者が不安なく、前向きに意見を言える。私も時々「ブレスト会議」に参加させていただきましたが、「まれに見る良いプロジェクト運営がなされている現場だ」と思いました。


施工者がそのような会議にフラットに参加させていただく機会はとても有益です。
物決めの進捗や意図が見える化されるので、現場の手配も行いやすく、施工の肝も把握できます。

ブレスト会議風景

公開空地に設置された関係者銘板

職人さんのモチベーションUP

水野
物決めだけでなく、夜間工事も行う厳しいスケジュールながら職人の皆さんのモチベーションもとても高いように感じました。関係者銘板設置の提案も快く受け入れていただきましたね。

池田
職人さんの名前を入れた関係者銘板を公開空地に設置する試みを現場初期に皆さんに知っていただくことは、モチベーションUPにつながったと思います。とは言え、チーム林の信頼感が一番です。定期的に行った焼肉現場大会などはとても良いイベントだったと思います。


やはり施主からの期待を身をもって知ることが、造り人のモチベーションUPに大きくつながります。

水野
現場で竣工時に作成された、施主、設計・監理者、施工者など、プロジェクト関係者の皆さんが参加されたダンスビデオ「恋するフォーチュン・クッキー」が、プロジェクトの成功を象徴していますね。

NCM社長 水野和則

※掲載内容は2015年時点のものです。

ダンスビデオ「恋するフォーチュン・クッキー」の一場面