BEMSとは? 仕組みやメリット・デメリットなど

脱炭素社会を目指した取り組みが世界規模で行われる現在では、建物からの二酸化炭素(CO2)排出量についても問題視されています。日本でも国の政策として、建築物省エネ法を改正するなど、企業に対しても対応を求める中で、BEMS(ベムス:Building Energy Management System)は建物の省エネを実現するシステムとして期待されています。

今回は、建物のエネルギー管理システムのBEMSについて、その仕組みやメリット、デメリットを解説します。

BEMSとは

BEMSは「Building Energy Management System」の略称で、施設全体のエネルギー使用量を一元管理・分析し、自動制御により室内環境とエネルギー性能を最適化した運転ができるシステムです。
また環境省によれば、以下のように定義されています。
「業務用ビル等、建物内のエネルギー使用状況や設備機器の運転状況を把握し、需要予測に基づく負荷を勘案して最適な運転制御を自動で行うもので、エネルギーの供給設備と需要設備を監視・制御し、需要予測をしながら、最適な運転を行うトータルなシステム」

出典:ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル) 用語集 環境省

BEMSの「EMS」は「Energy Management System(エネルギーマネジメントシステム)」のことです。このEMSは現在、さまざまな施設や建物にも導入されています。たとえば、家庭向け(Home)のEMSは「HEMS(ヘムス)」、工場(Factory)向けのEMSは「FEMS(フェムス)」と呼ばれ、それぞれ注目を集めています。

BEMSの仕組み

オフィスビルの空調と照明を例としてあげると、BEMSは各部屋、各フロアに設置された「人感センサー」「温湿度センサー」などの情報を「中央監視装置」に送ります。中央監視装置の役割は、エネルギー使用量を監視しながら、空調や照明の運転が最適化されるように制御・管理を行います。

参考1:ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS) 国立環境研究所
参考2:「中央環境審議会 地球環境部会(第81回)議事次第」資料2 民生部門のエネルギー消費動向と温暖化対策2/2 環境省

BEMSのメリット

施設にBEMSを導入するメリットを3つ紹介します。

  • 見える化によってエネルギー消費傾向の把握と改善
  • ランニングコストの削減(ピークカット、エネルギー使用量の削減)
  • エネルギー管理の省力化(クラウド型BEMSの利用)

BEMSの導入により、「どんなタイミングで」「どれくらいエネルギーが消費されているか」がグラフなどで見える化できます。いつ、どこに無駄が発生しているか、電力ピークのタイミングなどの消費傾向を細かく分析することで、さまざまな問題点が明確化できます。効率的な運転に改善していくことでコスト削減が図れます。

またBEMSの自動制御によって、電気使用量が多い時間帯の電力を監視・調整して、ピークカットを行うことができます。この電力量の監視・調整によって消費電力量を計画的にコントロールすることをデマンドコントロール(またはデマンド制御)といいます。

一般的なオフィスビルの場合、建物の築年数が長くなるほど「イニシャルコスト(建物を建設するときの初期費用)」よりも「ランニングコスト(建築後にかかる維持管理や修繕費用などの費用)」の方が高くなります。そのため、BEMSの導入によってエネルギー消費の最適化や、見える化した課題を克服していくことで電気利用料を抑え、建物のランニングコストを削減する取り組みは重要です。

近年では、エネルギー管理を手がける企業のクラウド上のシステムを利用したBEMSの導入が進んでいます。クラウド型のBEMSは遠隔地から複数のビルを連携管理できます。また導入コストや運用費を抑えることができ、システムの更新や機能の追加・変更が容易なため、中・小規模ビルへも導入しやすいというメリットがあります。

BEMSのデメリットや注意点

BEMSのデメリットや注意点として挙げられるのが、導入時にかかる初期費用です。BEMSを導入するためには、ビル内の各部屋や各フロアへのセンサー、制御装置、そして中央監視装置などの費用がかかります。またクラウド型BEMSの場合はインターネットを利用することからセキュリティ対策が必要になります。

初期費用がかかる一方で、長期的に見れば、BEMSの導入によって無駄なエネルギー消費を抑えることによる維持費の削減が期待できる面もあります。導入にかかる初期費用と維持費の削減のバランスを考えながら、検討する必要があります。

脱炭素や電気代の高騰などが叫ばれる現代において、BEMSは建物の省エネを実現してくれるシステムの一つです。初期費用は必要となるものの、長期的に見ればエネルギー消費傾向の把握やエネルギー消費の最適化により、ライフサイクルコストの削減、二酸化炭素(CO2)排出量の低減にもつながります。また環境に配慮した取り組みは、社会的な評価や企業のイメージアップにつながります。この機会に、BEMSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

また、BEMSとIoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)などを活用したスマートビルディングについては別記事「スマートビルディングとは?注目される背景やメリット・課題について解説」にて詳しく解説しています。こちらの記事も合わせて参考にしてください。

日建設計コンストラクション・マネジメントは、建設プロジェクトの成功を実現するパートナーとして、あらゆる課題を解決する最適解をご提案しています。BEMSの導入に関しても幅広い視点からバックアップいたしますので、お気軽にご相談ください。
建物・不動産に関する各種ご相談は、日建設計コンストラクション・マネジメント(NCM)までお気軽にご相談ください。

share