建設業の「施工管理」と「コンストラクション・マネジメント」、「施工監理」、「現場監督」の役割や違いについて

建物の建設や改修、長寿命化、解体といった建設工事や、道路やトンネル、ダムなどの土木工事の工事現場における「施工管理」の業務は、同じ建設業界の「コンストラクション・マネジメント(Construction Management、略称:CM、直訳:建設管理)」と同じ管理を行うと混同されることがあります。さらに、「施工管理」は同じ発音の「施工監理」と混同されたり、同じ建設現場の最前線で業務を行う「現場監督」と混同されることもあります。これらはそれぞれの役割や立場、業務内容が異なるため、正確に理解する必要があります。
本コラムでは、外部から見るとしばしば混同されるこれらの4つの業務の役割や違いを詳しく解説します。

施工管理とは?

施工管理とは、建物などの建設工事を契約に基づいて設計図書どおりの品質を工事期間内に安全かつコスト効率良くに施工する方法を検討し、策定した施工計画に基づいて工事を実施・進捗の管理を行うことです。現場技術者を指揮監督し、工事全体を管理します。国家資格では「施工管理技士」があり、工事の種類や規模によっては、各工事現場に必ず1人以上はこの資格を有する者を設置しなければなりません。

1)施工管理の主な業務

工事の着工に先立ち、施工管理で作成する資料のうち、工事全般に関する内容の一例を以下に紹介します。これらは工事着手会議(工事キックオフ・ミーティング)や各会議体で関係者と共有し、工事が円滑に推進できるように確認・共有します。

  • 総合工程表
  • 施工組織表・連絡先
  • 施工計画書
  • プロモーション工程表(もの決め工程表)
  • 総合仮設計画図
  • 総合施工計画書
  • 品質管理計画書
  • 安全衛生管理計画書
  • 建設廃棄物処理計画書
  • 提出する書類一覧
  • 緊急連絡先一覧

など

工事が開始した後は、施工管理においては「品質管理(Quality)・原価管理(Cost)・工程管理(Delivery)・安全管理(Safety)・環境管理(Environment)」のいわゆる5大管理を行います。5つの項目はそれぞれの単語の頭文字をとって「QCDSE」と表されることがあります。

  • Quality(品質)-設計図書通りの品質を確保できるように工事を管理する
  • Cost(原価)-予算の範囲内で工事を管理する
  • Delivery(工程)-工事を工期内に完成させるために工程を管理する
  • Safety(安全)-作業員の安全確保と事故防止のために安全に施工できる体制や環境の整備
  • Environment(環境)-職場環境、周辺環境、自然環境に配慮する

施工管理の業務をまとめると、「現場の安全を確保して、設計図書通りに品質の高い建築物を請負時に契約した工期や予算を守り、環境へも配慮しながら完成させること」といえます。このほかにも、発注者や各業者との打ち合わせ、報告書の作成など、施工管理の業務は大変広範囲です。

2)施工管理の重要性

前述の5大管理の解説でわかるように、発注者が求める品質で、安全に、工期通りに工事を終わらせるためには、施工管理は必要不可欠です。施工管理が不十分だと、工期の遅れや、工事にかかる費用の増大生などにつながる恐れがあります。

「施工管理」と「コンストラクション・マネジメント」の違い

「コンストラクション・マネジメント(Construction Management、略称:CM)」を直訳すると「建設管理」ですが、その業務領域は広がっており、施工管理の業務と立場や建設プロジェクトの段階での業務内容が異なっていますので、正しい理解が必要です。

1)コンストラクション・マネジメントとは

コンストラクション・マネジメントとは、建築プロジェクトに関する専門知識と経験が豊富なコンストラクション・マネジャー(CMr)が技術的な中立性を保ちつつ、発注者のパートナーとして
プロジェクトの各段階(事業構想・企画・計画段階、設計段階、発注段階、工事段階、維持管理段階等)において、プロジェクト運営、品質管理、コスト管理、スケジュール管理などの各種マネジメント業務を行います。
(さらに詳しく知りたいという方は、「コンストラクション・マネジメントとは?意味や概要をわかりやすく解説」の記事も併せてご覧ください。)

2)立場や役割の違い

施工管理とコンストラクション・マネジメントでは、立場と役割が違います。
コンストラクション・マネジメントの業務は上記で解説したように、発注者のパートナーとして、建設プロジェクトの各段階で、発注者の意図する方向に向かうように各種マネジメント業務を行います。
それに対して、施工管理は前段で解説したように、建設工事において現場の安全を確保して、設計図書通りに品質の高い建築物を請負時に契約した工期や予算を守り、環境へも配慮しながら完成に向けて管理します。

建設プロジェクトにおいて発注者は、設計を依頼する「設計者」と、工事を依頼する「施工者」のそれぞれとコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めます。発注者に建設プロジェクトの経験や知識が不足していると、複雑な建物になるほど、発注者の要望や想いが設計者や施工者に伝わらない場合や、発注者が設計者や施工者からの説明内容を十分に理解できない可能性があります。コンストラクション・マネジメントを導入すると、プロジェクトの各段階で発注者の知識や技術を補って支えてくれます。

施工管理者は、依頼した工事が要求する品質で予算内にスケジュール通りに完了できるかを左右する存在です。商業施設やホテル、工場、空港など建物の用途や機能によって、建物の仕様や施工方法などが異なるため、発注者が求める建物を実現するためには施工管理者の技術力や経験は重要です。

「施工管理」と「施工監理」の違い(管理・監理の違い)

施工管理と同じ「セコウカンリ」の発音で、混同されやすい言葉に「施工監理(セコウカンリ)」があります。現場ではよく、前者の管理を「たけかん、くだかん」、そして後者の監理は「さらかん」、などと呼び分けられています。

施工管理と施工監理、この2つの違いを簡単に言うと、

  • 施工管理-設計図書通りに施工する業務
  • 施工監理-設計図書通りに施工されている事を確認する業務

と区別できます。

参考:日本建築士会連合会 工事監理と施工管理は異なります

施工「管理」は、前段で述べたように、品質、原価、工期、安全、環境など、建設工事に関わる全体をコントロールし、スムーズに契約通りに工事を進めることにあります。

一方、施工「監理」は、設計図書の通りに工事が進んでいるかを確認する業務のことです。もし設計図書通りに進んでいなければ、施工監理者は施工業者に設計図書のとおりに工事を実施するように求めます。施工監理によって工事の品質の確保と、施工不良や施工不備を未然に防ぎます。国土交通省からもそのガイドラインが提示されています。

参考:工事監理ガイドラインの策定について | 国土交通省

施工監理は設計者や施工監理専門の担当者が行うこともありますが、工事の透明性を担保するために、発注者の意向で第三者が行うこともあります(第三者監理方式)。なお、一定の用途・構造・規模等の建築物の施工監理は、国家資格の「建築士」の資格保有者でなければできません。

参考:工事監理制度の概要 | 国土交通省

「施工管理」と「現場監督」との違い

施工管理と現場監督の仕事は、「現場の管理を行う」という点ではどちらも同じですが、その役割や仕事内容は少し異なっています。
施工管理は現場全体の責任者として、工事に関わる全体を管理します。さらに、外部の関係者と打ち合わせをしたり、書類作成や提出などの事務作業をしたりするのも、主に施工管理の仕事です。

一方、現場監督は、施工管理が作成した計画に基づいて、作業の指示を行い、現場の司令塔となって工事の進捗を管理します。現場監督は現場の作業が円滑に進められるよう、現場の段取りや職人さんとの話し合い、資材の注文や管理なども現場監督が行いますが、その工事の予算管理などは施工管理者が行います(5大管理の原価(Cost)管理)。
規模の小さい建設現場では施工管理と現場監督に明確な線引きがなく、両者を兼ねることもありますが、両者の立場や業務はこのように微妙に違いがあります。

建設プロジェクトにおいてよく使われる「施工管理」や「施工監理」、さらに「現場監督」、「コンストラクション・マネジメント」の用語や役割は混同されることもありますが、その業務内容には違いがあり、正しく理解することで工事段階のさまざまなやりとりをスムーズに進められます。

また、建設工事に関して「建設工事の流れ」や「建設業界の働き方に関する取り組みの3K」を下記のコラムで解説しています。あわせてご覧ください。

建築工事の流れをわかりやすく解説
建設業の新3Kとは? 実現に向けた事例や建設DXの取り組みも紹介

建設工事に関するご心配や、建物・不動産に関する各種ご相談は、日建設計コンストラクション・マネジメント(NCM)までお気軽にご相談ください。

share