スマートビルディングとは?
注目される背景やメリット・課題について解説

最新のデジタル技術を活用した「スマートビルディング」への関心が高まっています。スマートビルディングは、エネルギー消費の適正化を図るだけでなく、ビル管理者・利用者の双方にとっての利便性の向上やセキュリティ強化、業務の効率化などが期待できます。

今回の記事では、スマートビルディングが注目される理由、導入前に知っておきたい課題について解説します。

スマートビルディングとは

スマートビルディングとは、明確な定義はありませんが一般的に、IoT(Internet of Things)やAI(Artificial Intelligence) といった最新のデジタル技術の活用と施設内の設備やデータを一元的に管理し、エネルギー使用量の低減、利便性や快適性の向上を図った建物のことを指します。また5G(第5世代移動通信システム)の活用によってロボットを利用したビル管理の効率化・省人化や、AIを活用したセキュリティシステムなどの取り組みもスマートビルディングの取り組みとして扱われることがあります。

スマートビルディングの関連技術

スマートビルディングの実現には、最新のデジタル技術が欠かせません。ここでは、特にスマートビルディングの実現に重要となる4つの関連技術について解説します。

1)IoT

IoTとは「Internet of Things」の略称で、日本では「モノのインターネット化」と表現されることが多い言葉です。家電製品など、身近なものをインターネット接続できるようにすることで、情報交換を可能にする仕組みを言います。例としては「スマートウォッチ」「インターネットに接続できるテレビ」「スマートスピーカー」などが挙げられます。

スマートビルディングも同じように、さまざまな設備をインターネットと連動させることで、遠隔によるシステムで建物を一元的に管理することが可能となります。

2)AI

AIとは「Artificial Intelligence」の略称で、日本語では「人工知能」と表現されています。これまで人間が行ってきた「データ分析」「学習」をコンピューターで行うことが可能となり、幅広い技術に応用されています。

スマートビルディングにもAIを応用することによって、24時間365日、ビルのデータ収集と分析を行い、エネルギー消費やセキュリティ設備などの最適化の実現に貢献します。

3)5G

5Gとは「5th Generation」の略称で、日本語では「第5世代移動通信システム」です。「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」を可能にする移動通信システムです。アナログ方式で通信を行っていた第1世代から、約10年ごとに世代交代されており、2020年代から登場したシステムが第5世代の「5G」と呼ばれています。

IoTやAIなどの技術を幅広く活用するために5Gは重要です。自立走行型のロボットの導入では遠隔地からでも常時リアルタイムで複数台を制御でき、ロボットによる配送や警備、清掃などを実現します。

4)BEMS

BEMS(ベムス)は「Building Energy Management System」の略称で、オフィスビルのエネルギー消費量の一元管理・分析・最適化を実現するシステムです。ビル内の快適性を保ちながら空調や照明の自動制御を行います。

BEMSとIoTやAIを連携させることで、よりきめ細やかな制御で快適性と省エネを両立させることができます。

スマートビルディングが注目される背景

2020年代に入り、デジタル技術をモノに搭載・活用し、高度な管理・情報処理能力を持たせる「スマート化」が進んでいます。建物でもスマート化によって、施設の利用者の情報を収集・分析し、利便性や快適性を向上させるサービスや、建物管理の合理化に注目が集まっています。

また環境の面からもエネルギー使用量の最適化によって、長年課題となっていた建物の二酸化炭素(CO2)排出量を削減し、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた貢献が期待されています。

スマートビルディングのメリット

スマートビルディングがもたらすメリットを3つ解説します。

1)省エネ化

ビルなどの建物で日常的に使用されているエネルギーは、空調、照明、警備システム、エレベーター、OA機器や電化製品など多岐にわたります。スマートビルディングの実現で、エネルギー消費の効率的な運用を図り、省エネ化を進めることできます。

ビルの省エネ化を目指すために、特に重要な役割を果たすのがBEMSです。BEMSによって、たとえば「人がいない場所の照明を消す・空調を弱める」といった自動的な電力の最適化はもちろん、ビル内で使用されているそれぞれの機器やセンサーからエネルギー消費データを収集し、傾向を分析できます。そしてエネルギー供給の最適化を実現し、エネルギーコストの低減につながります。

2)安全性の向上

スマートビルディングではセキュリティ面の安全性向上も期待できます。

AIを活用した画像認識技術では、ビルのセキュリティゲートやオフィスへの入退室管理を顔や瞳の認証で行ったり、監視カメラシステムに応用して不審者対策を行ったりすることもできます。

3)建物管理の効率化

ビル管理に関連するあらゆる業務の効率化や省人化も期待できます。

  • 清掃ロボットや警備ロボットによる省人化
  • エレベーター、エスカレーターの効率運用
  • 会議室やトイレの空き状況の確認
  • 利用者や来店者のデータ収集・分析

この他にもさまざまな技術やサービスの開発が進められており、スマートビルディングではビル管理の効率化や省人化だけでなく、利用者の快適性や効率性の向上の可能性も秘めています。

スマートビルディング導入の課題

スマートビルディングの実現に向けては、導入から運用までの検討が必要です。

1)導入コストとメンテナンスコスト

スマートビルディングを導入するには、施設内の各所にセンサーや制御機能、管理機能を備えた設備を設置するため、新築の場合は建設コストの増加や、建物を改修する場合はテナントとの調整も必要になります。また導入後はメンテナンス費用やシステム利用料がかかります。

2)システムのセキュリティ対策

スマートビルディング自体を支えるシステムのセキュリティ対策も不可欠です。IoTによって施設内のあらゆる情報を一元管理することから、スマートビルディング自体のシステムの安全性が低い場合、サイバー攻撃によってビルの情報流出や管理が停止するリスクがあります。

また情報流出やシステムエラーが発生すれば、ビル管理者だけでなく、利用者にも損害が及ぶことが懸念されます。スマートビルディングを導入する際は、システムセキュリティに対する高い意識と取り組みが必要です。

IoTやAIなどの先進的なデジタル技術を活用するスマートビルディングは、ビル管理者、そしてビル利用者それぞれに幅広いメリットを与えてくれるものです。また、エネルギー使用量を抑えられることから二酸化炭素(CO2)の排出量削減などに具体的な動きが求められる現代においても、非常に重要な役割を果たします。課題についても理解した上で、スマートビルディングを検討してはいかがでしょうか。

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