建設プロジェクトにおける品質管理

品質管理は、建設プロジェクトにおいてお客さまのニーズを満たすために欠かすことができない重要な管理項目のひとつです。ところが、プロジェクトにおいていざ品質管理を任される立場になってみると、具体的に何から取り組んだら良いのか、どのような業務が必要なのかいまひとつ分からないという方は意外と多いのではないでしょうか。
そこで今回は、建設プロジェクトにおける品質管理について、その方法や重要性を解説していきます。

品質とは?

「品質」というのは、単に製品の「質」や「出来栄え」「性能の良さ」のことだと思われがちですが、本来の意味は少々ニュアンスが異なります。JIS規格では品質を「製品やサービスが使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質・性能の全体」と定義しています。
つまり「品質が良い」というのは、「その製品やサービスを利用するお客さまが要求する機能や性質を満たしている、またはそれ以上の魅力を備えている状態」と言えます。

「品質が良い」を実現する

お客さまが「品質が良い」と感じるには、少なくとも「備えていて当然と考えられる機能・性能(当たり前と考えられる品質)」を満たすことは重要です。さらに「備わっていると満足度がより増す機能や性能(魅力的な品質)」は、ブランド力、適正納期、適正コスト等、お客さまのニーズや優先順位によって価値が異なるため、一概に品質の良し悪しを定義することは難しいです。
よって品質の良し悪しは、お客さまが決めるのであって、製作側や提供側が決めることはできないといえます。お客さまが製品やサービスに求めるさまざまなニーズへの対応活動全体が「品質管理」です。

フェーズ毎の品質管理

建設プロジェクトは、お客さまの求める機能や性能、立地環境、建物の用途、利用者、法規、時間、費用等の制約条件などが全て異なるため、二つと同じものはない「一品生産」です。
そのため、お客さまのニーズを満たす「品質の良い」建物を建築するためには、建物の企画・計画段階から設計段階、工事段階、建物完成後の維持・保全の各段階でお客さまの要求事項の連続性と整合性を保ちながら「品質管理」を行うことが重要です。
建設プロジェクトにおける品質管理の一例をご紹介します。

① 企画・計画段階

企画段階では、さまざまな条件や方針、要望(建物の目的や予算、全体スケジュール、求める建物グレード、設計者や施工者の選定方法など)を整理することが重要です。
例えば、賃貸ビルの場合は想定するテナントの種類や規模によってニーズや建物性能が異なります。金融機関から融資を受ける場合は、金融機関との折衝によって予算が決まる場合もあります。

② 設計段階

設計者がお客さまのニーズを設計図書(建築工事の実施ために必要な図面など)に反映するために、建物の大きさや高さ、形状、構造、設備、外装・内装の仕上げなどを具体的に検討します。
建物の試作品を作ることは難しいため、お客さまのニーズが満たされているかどうかを確認するために設計者から説明を受け、設計図書やパースなどで内容を確認することが重要です。

③ 施工段階

施工者が設計図書をもとに工事を行います。お客さまのニーズが反映された設計図書通りに工事されているかどうかを確認することが重要です。
施工者からの工事説明や、施工のために作成する施工図やどのように施工するかを示した施工計画書の内容確認、工事後に行う完成検査などで確認します。

④ 維持・保全段階

完成した建物を長く使用し続けるためには定期的なメンテナンスや計画的な設備機器の更新が重要です。
清掃や点検など建物の状況を日ごろから把握することで、機能低下や劣化部の早期発見や予防保全が可能になり、事故などのリスク回避や未然防止、維持費削減につながります。

品質管理が左右するプロジェクトの成否

建設プロジェクトにおける品質管理は、建設プロセスの各段階において、お客さまのニーズが確実に反映されていることを連続的に確認し、当初の目的を達成するマネジメント手法です。
建設プロジェクトにおいては、不動産会社、設計者、施工者、建物管理者など社内にとどまらない多くの関係者が関わります。お客さまのニーズを関係者と正しく共有し、一丸となって建設プロジェクトに取り組むことが大切です。
建設プロジェクトにおける品質管理について、ご質問、ご不明な点等ございましたら、日建設計コンストラクション・マネジメントまでお気軽にご相談ください。

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