建物の資産価値の維持・向上を図る『中長期保全計画』について
2022.10.27 Thu
ビルの建設・改修
一定の築年数を経過すると、設備機器などの更新がある年度に集中し、お客さまの費用負担も一時的に集中する場合があります。
そのため、大まかな費用やスケジュールを把握しておくことで、費用負担の平準化や修繕積立金などの将来的な資金調達の検討も可能となります。
そこで今回は、一般的な事務所ビルを想定した中長期保全計画について説明していきます。
「保全」と「運用」とは?
建物を使用している期間中、「保全」「運用」にかかる生涯コストは建設コストの約3倍から4倍と言われています。建物を運営する上で、「保全」「運用」は非常に重要なファクターとなります。
「保全」に関する費用とは、保守・点検、運転監視、清掃、警備、修繕・更新、改修(バリューアップなど)などです。
「運用」に関する費用とは、光熱水費、税金・保険などのことを言います。その中でも、中長期的な計画に基づいて準備すべきなのが「保全」に関する費用で、特に「修繕・更新」の費用です。
中長期保全計画の目的やメリット
中長期保全計画とは、建物の資産価値の維持・向上を図るため、外壁、仕上、設備機器などの耐用年数・更新周期を考慮し、建物の特徴にあわせて作成する保全計画です。
中長期保全計画の主な内容は、保全・改修の実施内容、予定年度、概算額です。またお客さまのニーズにあわせて、省エネルギー対応・BCP対応など社会的ニーズによる項目の追加する場合もあります。中長期保全計画を作成するメリットは、将来の不動産価格の予測、建物の修繕・改修工事の時期および概算金額が把握できることです。
中長期保全計画の進め方や費用について
中長期保全計画を作成する流れや検討内容の一例をご紹介します。
1:計画作成の目的や範囲、条件の確認
2:現地調査・点検資料確認による現状の劣化度把握、管理者ヒアリングの実施
3:中長期保全計画(案)の検討
修繕・更新の工事は建物を使用しながら工事を行うことが多いため、工事による企業活動への影響がない合理的な計画とします。耐用年数を考慮した素案作成後、計画年度はお客さまと相談しながら、実現可能な年度に調整いたします。中長期保全計画の費用は、計画作成時に工事条件を想定した概算費用となります。また物価上昇率は含まないため、実際の工事費とは乖離する可能性があります。実際に工事を発注する場合は、再度工事条件を整理し、費用の見直しが必要です。
維持・保全の項目や更新時期の例
当社の事例を基に一例を紹介します。(建物の規模や用途、使用状況などによって条件は異なります)
1:10年から15年程度
外装仕上(塗装・タイル補修・鉄部塗装)、パッケージ型空調機など
2:15年から20年程度
屋上のシート防水・塗膜防水、内装仕上、照明器具、中央監視、熱源機器、空調機器、換気設備、自動制御、防災設備(自動火災報知設備ほか)など
3:25年から30年程度
屋上のアスファルト防水、受変電設備、制御盤、自家発電機、衛生設備(受水槽、高架水槽、便器、配管)、昇降機、消火設備など
建物や不動産の価値の向上を図る改修
保全工事と合わせて、建物や不動産の価値の向上を目的にバリューアップ工事を行う事例も多いです。一例をご紹介します
・環境配慮への取り組みによってオフィスビルやテナントの企業イメージの向上を図れるように屋上緑化や壁面緑化の設置、太陽光発電設備の設置、節水機器や自動水栓など環境配慮技術の導入。
・テナントが安心して利用できるよう地震に備えて耐震改修工事や、停電時に業務が継続できるよう非常用発電設備の設置など防災性能の向上を図る改修工事
・セキュリティを高め、安心して利用できるようセキュリティ計画の見直しや、防犯カメラや出入監理システム、カードリーダー、インターホンなどのセキュリティ機器の新設や更新。
建物を長期にわたり良好な状態で使用するためには、外装・防水・付随設備の物理的な劣化に対して計画的な保全工事が不可欠です。中長期保全計画の作成をお勧めします。また建物や不動産の価値向上を図るため、バリューアップ工事もあわせて検討してはいかがでしょうか。各種ご相談は、日建設計コンストラクション・マネジメントまでお気軽にご連絡ください。