建築工事の流れをわかりやすく解説

オフィスビルや工場、商業施設といった建物の工事がどのような手順で行われているかご存知ですか?工事の期間はプロジェクトの規模や内容によって異なりますが、工事の大まかな流れというのは基本的に同じです。
建設プロジェクトのコンストラクション・マネジメント(CM)業務を専門に行っているCM会社に依頼する場合でも、設計者や施工者などの関係者とさまざまなやりとりをスムーズに進めていくためには、着工の準備段階から完成まで全体の流れを正しく把握しておくことが重要です。そこで今回は、オフィスビルを例に工事の大まかな内容についてわかりやすく解説していきます。

着工準備

工事を開始するために、次の準備を行います。

申請・届出

建物や工事に関する必要な申請・届け出について、書類を作成して行政に提出します。設計者や施工者と協力して作成していきます。

近隣説明会

近隣の方々にどのような建物になるのか、どのように施工していくのかを説明します

現場調査(敷地調査)

工事に関するプロセスの早い段階で必ず行われるのが現場調査です。敷地境界の確認、敷地の測量、隣接する道路や周辺環境などを確認します。

地盤調査

地盤が固い支持層や地下水の有無および深さなどを調査します。工事前に地盤を調査することで、適切な杭工法、山留工事、掘削工事、排水計画などを検討することができます。傾斜地などは地盤の強度にばらつきが出ることが多いため、しっかりと調査を行うことが大切です。
また東日本大震災以降は、地盤調査でN値(地盤の強度)が低い砂層の場合は液状化試験を行うケースが増えています。

仮囲い・ゲート

工事現場の境界を囲むように設置し、車両の出入り口にはゲートを設置します。現場内外の安全対策だけでなく、工事で汚れた水や粉塵が現場の外に出ることを防ぎます。
イラストが描かれたり緑が置かれたり、騒音計が設置されるなど周りの風景や環境に合わせて工夫されていることが多いです。

着工後

建設業の業種は、建設業法によって29業種に分けられています。1つの建物を完成させるために多くの専門職種の職人さんが協力して工事を行います。

杭工事

杭工事とは建物を支える杭を地中に造る工事です。建物の規模が大きい場合や地盤が弱い場所に建てる場合は、建物の下部に杭を造り、地中の深くの固い支持層で建物を支える「支持杭」を使用することが多いです。

掘削工事(くっさくこうじ)

掘削工事とは地下(地面より下)の工事を行うために土を掘る工事です。地下室の有無や敷地周辺の条件により適切な工法を選択します。
土を掘ったことにより、側面が崩れないよう仮設の壁(山留)を作りながら施工します。

地下躯体工事

建物の基礎や地下部分の柱、梁、床、壁といった骨組み部分を施工します。地上躯体と地下躯体を同時に施工できる逆打ち(さかうち)工法も増えています。

地上躯体工事

地上部分の建物の柱や梁、床など施工します。

外装工事

建物の外壁を施工します。高層ビルに多いガラス張りの外装材や外壁用パネル、外部建具などを施工します。外装工事の施工後に足場を解体することが多く、建物全体が現れます

内装工事

天井や壁、床を施工します。配線や配管、設備機器も設備スペースや天井や床下などに順次施工します。エレベーターやエスカレーター、各設備工事も内装工事のタイミングで施工します。

外構工事

敷地内の歩道や車道、植栽などの工事を行います。シンボルツリーやアートを置く場合もあります。

その他

工事に関連する内容の一例をご説明します。

式典

建設工事では神主さんを招く神式で行う場合や、仏式やキリスト教式で行う場合もあります。以下は一例です。お客さまによっては一部の式を行わない場合もあります。
・地鎮祭・・・建物の工事に入る前に土地の守護神を祀り、工事の無事を祈る祭り
・上棟式・・・地上躯体工事の最後の作業の棟上げを祝う式
・竣工式・・・建物が完成したことを祝い、披露する式

検査

建物の引渡し前に行われる施主検査や、建物の各工事の段階で施工者が行う施工者自主検査、工事監理者が行う工事監理者検査、行政が行う中間検査や完了検査、消防検査などがあります。施主検査ではCM会社が実際に一緒に立ち会って不備や不具合が無いかを検査します。

解体工事

敷地内の建物の撤去が必要な場合は、解体工事を行います。古い建物で資料が残っていない場合は、アスベスト調査・解体、地中埋設物、土壌汚染の撤去などが必要になる場合もあります。

環境やコストにやさしい建設工事を行うためには

建設工事のコストやスケジュール(工程)に大きな影響を与えるのは、企画・設計段階の内容です。これは設計段階の検討が進むほど建物の仕様や条件が決定するため「やっぱりこうしようよ」という変更がだんだん利かなくなるためです。
また周辺環境や地球環境に配慮した建設工事を行うために施工技術(ゼネコンの保有技術等)を企画・設計段階から検討することでお客さまのSDGsへの取り組みに対応できる場合もあります。設計段階から施工技術を反映することで「コストの縮減」や「工期の短縮」をより具体的に検討できるECI方式(Early Contractor Involvement)を採用するケースも増えています。

建設工事の流れを知っておくと、設計者や施工者などの関係者とのさまざまなやりとりをスムーズに進められます。実際に工事が始まってからも、進捗状況を正しく把握することができますので、上記でご紹介した内容を参考にして、工事の流れを正しく理解しておきましょう。
また、建設工事に関して「建設業界の働き方に関する取り組みの3K」や「建設業の『施工管理』と『コンストラクション・マネジメント』、『施工監理』、『現場監督』の役割や違い」を下記のコラムで解説しています。あわせてご覧ください。

建設業の新3Kとは? 実現に向けた事例や建設DXの取り組みも紹介
建設業の「施工管理」と「コンストラクション・マネジメント」、「施工監理」、「現場監督」の役割や違いについて

建設工事に関するご心配がある方は日建設計コンストラクション・マネジメントまでぜひお気軽にご相談ください。

share