耐震診断と耐震補強とは?費用や期間について
2022.06.21 Tue
建築・建設の基礎知識
南海トラフ地震や首都直下地震など、日本全国で大地震発生の可能性を指摘されています。大震災が発生した場合に、建物の倒壊・損壊から命や財産を守り、二次被害を防ぐためには、建物の耐震性能が現在どのような状態なのかを正しく知り、必要となる耐震改修を行うことで被害を抑えることができます。建物の耐震性能を確認するための調査は専門的な知識が必要なため専門業者に依頼する必要があります。ところが、費用がどのくらいかかるのかが不安で耐震診断を迷われている方も多いかと思います。
今回は、耐震診断の必要性や耐震補強について、詳しく説明していきます。
耐震診断について
耐震診断は、既に建てられている建築物に対して、現行の基準と照らした耐震性能を調べて、耐震改修が必要なのかを診断します。特に1981年5月31日以前の旧耐震基準で建築された建物は、耐震性能が不足している可能性があります。
【旧耐震基準と新耐震基準の違い】
・旧耐震基準は、大地震に対する耐震性能の検証がされていません。
・新耐震基準は、大規模に対する耐震性能の検証がされています。
※新耐震基準が適用されたのは1981年6月1日以降です。
【地震被害について】
・1995年の阪神淡路大震災や2016年の熊本地震においては、旧耐震基準で建てられた建物が大きな被害を受けました。一方で、新耐震基準で建てられた建物は大きな被害が少ない結果になりました。
上記以外にも耐震性能が不足している可能性がある建物があります。例えば、経年劣化が懸念される建物、過去に大地震を経験した建物で損傷などの懸念がある建物です。
耐震診断の流れ
耐震診断は、予備調査、本調査に基づいて行います。
【予備調査】
・耐震診断に必要な建物の情報を集めます。
・建物概要を設計図書などから確認し、構造計算書や申請資料などの関係書類の有無の確認、修繕・改修履歴や過去の地震の被災履歴などを確認します。
【本調査】
・建物を訪問して現況調査を行います。
・柱や梁などの位置や断面寸法を図面と照らし合わせて確認し、建物のひび割れや変形などの目視調査、敷地周辺の地盤や傾斜などを調査します。
この時、コンクリートのコア抜き試験を行い、コンクリート強度がどの程度あるかを確認します。併せて、中性化の進行状況も確認します。
【耐震診断】
・予備調査と本調査の結果から建築物の耐震診断を実施し、耐震性能を評価します。
耐震診断の費用や期間は、建物の構造や規模、特徴などによって大きく異なります。また、設計図書や構造図等が無い場合は、図面の復元に費用と時間を要する場合もあります。
耐震診断の結果
耐震性能は「Is値(構造耐震指標)」で算出されます。対象とする用途によって耐震性能目標を確保するために必要とするIs値は異なります。
例えば、鉄筋コンクリート造の一般的な用途の建物の場合、Is値が0.6未満であれば、想定する大地震に対して所要の耐震性能が確保されていないと判断されます。もし耐震性能が確保されていない場合は、耐震補強を行うことなどで耐震性能を向上させることができます。
耐震補強について
耐震補強の検討は補強方法だけでなく、工事条件や工事期間も考慮して検討します。例えば、昼間工事を行う場合は工事に伴う音や振動、建設資材の搬出入などによって建物利用者や企業活動に与える影響は大きいです。そのため工事期間が夜間や休日に耐震補強工事を行う場合もあります。また、学校施設など工事期間が限られる場合は、工事を複数回に分けて段階的に耐震補強工事を行う場合もあります。
耐震補強の例として、耐震壁の増設、柱・梁に外付けフレームを付加した補強、柱に鋼板や炭素繊維を巻きつける補強、垂れ壁や腰壁に耐震スリットを設けるなどがあります。
費用と期間
このように、耐震診断や耐震改修の費用や期間は、耐震補強の方法、建物の構造や規模、工事条件などによって大きく異なります。また、多くの地方自治体では耐震化に関する補助金制度を実施しています。地方自治体によって規定や条件が定められており、条件を満たした場合は自己負担額を軽減できるケースもあります。
いつ起こるかわからない大地震から大切な命や資産を守るためにも、適切なタイミングで耐震診断を行い、必要であれば耐震補強を行い、耐震性能を向上させましょう。建物の耐震対策などでご相談がある方は日建設計コンストラクション・マネジメントまでぜひお気軽にご相談ください。