建設業におけるドローン活用!活用例からメリットや注意点まで

多くの業界・企業が人手不足の課題に直面し、業務の効率化など解決に向けた変革を図っています。建設業界も例外ではありません。そこで大きな役割を期待されているのがドローンを含めたICT(Information and Communication Technology)の活用です。
ドローンやICTは、業務の効率化や生産性の向上に貢献するだけではなくコストの低減にもつながる場合があります。今回は、建設業におけるドローンの活用について詳しく解説します。

ドローン技術とは

「ドローン」は、遠隔操作や自動操縦ができる無人の航空機のことを指します。一般的にイメージされるのは、複数のプロペラによって飛行する回転翼型のドローンが多いですが、飛行機のような形状をした固定翼型のドローンもあります。
回転翼型のドローンは垂直離着陸が可能で、プロペラの回転数の調整によって前後左右に移動できます。ジャイロセンサーや加速度センサー、障害物センサーなど各種センサーが搭載されていることもあります。
ドローン技術自体は古くからあり、2010年代頃からは民生用、産業用としても普及をはじめ、TVや映画などの空撮用、農業での農薬散布や生育監視用、林業での運搬用など、広く実用化が進んでいます。

建設業でドローンは何に活用されているのか

建設業では、どのような形でドローンが活用されているのか、また今後どのような活用が期待されているのか、いくつかの具体例をみていきましょう。

1)測量

建設工事は、測量から始まります。測量は「距離」「角度」「高さ」を測り、土地の広さ、起伏、位置関係を明らかにし、数値化、図面化する作業です。建設工事においては、建物の工事を開始する前はもちろん、建設工事中も測量を行います。

これまで測量を行う際は、測量機器を人が持ち歩いて、建設現場の隅から隅まで歩き回り、測量していました。測量範囲が広く、高低差が大きいほど、時間と労力が増し、さらにはコストを要します。この点が、従来の測量の悩みのタネでした。

こうした測量の課題に役立つのがドローンです。ドローンを使った測量では、上空から撮影するので、建設現場を歩き回る必要はありません。また、ドローンは低空飛行が可能なので、詳細なデータを収集することができ、高精度の測量が広範囲で可能です。さらに、災害現場や危険区域、高所やへき地など、人が容易に立ち入れない場所の測量にもドローンは役立ちます。

そして、測量後の解析や三次元モデル作成、土量計算なども専用ソフトを使うことで、大幅に作業の時間が短縮されます。このように、ドローンの活用は、測量に関連する労働時間とコストの削減に大きく貢献しています。

2)施工管理

建設現場における施工管理は、工事が予定通り進んでいるかを確認する工程管理、現場の作業環境の安全面に問題がないかを確認する安全管理、設計図面や品質基準に則って工事が進められているかを確認する品質管理、予算内に工事が進められているかを確認する原価管理など多岐にわたります。その業務のほとんどは、建設現場に直接足を運んで確認しなければならず、特に大規模なプロジェクトでは変更も多いため、正確な施工管理のためには頻繁に現場に行かなければならず、非常に時間を要します。

しかし施工管理にドローンを使うことで、現場確認のために人が移動する必要がなくなって大幅な工数削減が期待できます。また、上空からのドローン撮影によって、施工現場全体を俯瞰した情報が得られるため、現場全体の状況や進捗を把握しやすく、不具合や遅れの早期発見につながるなど、施工管理の精度向上を図ることができます。さらに、リアルタイムの映像や画像を複数人で共有可能になり、大幅な業務効率の改善にもつながることも大きなメリットです。

3)点検や調査

橋やトンネル、ダム、ビルなど、大規模なインフラ設備の老朽化への対応は、日本各地で課題となっています。安全に使用していくために欠かせない定期点検や災害時の被害状況調査の場面でも、ドローンは重要な役割を担っています。特に橋やダム、ビルの外壁といった高所での点検は危険の多い作業でしたが、ドローンを活用することにより、作業員を危険にさらす必要はなくなりました。

また、点検のための足場や、クレーンやロープの手配などの事前準備も、ドローンを使うことで多くが削減できて、より容易に点検ができます。点検作業における労働時間やコストの低減、作業員の安全確保など、多くの面でドローンの活用は大きく貢献しています。

4)運搬

建設資材や工事用機器の運搬が多い建設業では、ドローンによる運搬が可能になれば、多くのメリットを享受できる可能性があります。例えば、山間部や谷、高所などに建設資材を運搬するのに重機や作業員による運搬ではなくドローンを活用すると便利な場合が考えられます。
ドローンを使った運搬は、配送サービスなど、すでに一部では実用化され始めています。1回の飛行で運搬できる最大重量はまだ30kg程度*で全体から見れば補助的な役割にとどまるものの、山間部や高所などでは活躍する可能性が十分あります。ドローンによる運搬には、建設業界からも多くの期待が寄せられ、本格的な実用化に向けて検証や実証実験が進められています。
*・・・2023年11月時点

建設業におけるドローン活用のメリット

建設業でのドローン活用によるメリットをまとめてみましょう。

1)安全性の向上・事故防止

転落の危険がある高所や足場の悪い場所での測量、点検作業をドローンが担うことで、作業員を危険にさらすことなく、安全に行えます。

2)効率性の向上・作業時間の短縮・人手不足の解消

人や重機が移動する手間が省け、足場やクレーンなどの準備も不要となり、効率性の向上や作業時間の短縮が図れます。深刻な人手不足の問題への対処法ともなるでしょう。

3)コスト削減

重機を使わなければいけない作業をドローンで代替できるなど、コスト削減にもつながります。ドローン活用で施工管理がより正確になれば、無駄な資材や人材の削減にもつながるでしょう。

現在はまだドローン活用が始まったばかりですが、今後はドローンそのものの能力の向上と活用実績が蓄積されることで、建設業における多くの場面で実用化が進むことが期待されます。

建設業でドローンを活用する際の注意点

最初に注意しなければならないのは、ドローンは法令によってさまざまな規制が設けられていていることです。飛行する場所、飛行の方法、機体の登録の義務化など、多岐にわたりルールが定められています。例えば飛行する場所については、現在の法律*では、人口集中地区での飛行や、操縦者が機体を目視できない範囲の飛行は原則として禁止されています。騒音など周辺環境への配慮も必要です。しかし、ドローンの操縦者に対して設けられた国家資格の有資格者なら許可を得れば飛行できることもあります。まずはドローンに関する法令の確認や不明な点は行政へ相談しましょう。
*・・・2023年11月時点

また、ドローンの操縦は簡単ではありません。遠隔操作で緻密な動きが難しい中、思った位置に飛ばす正確性が求められ、かなりの熟練したスキルが必要です。思うような操縦ができない場合は、成果を得られないばかりか、墜落の危険性、周囲に迷惑をかけるなど可能性があります。ドローンを活用する場合は、熟練した操縦技術者の確保や、社内における技術者の育成に力を入れる必要があります。各地で開催されている講習会やドローンスクールに参加してみるのもよいでしょう。

そして、悪天候や強風の時は飛行が困難であること、バッテリーで作動するため長時間の飛行には向いていないこと、さらに、通信環境にも制約があることなど、ドローン本体の能力にもまだ限界があります。ドローンを活用するには、できることとできないことを見極めて使いこなす必要があるでしょう。

ここまでドローンについて建設業界での活用についてご紹介しました。建設工事の流れや建設業界の働き方に関する取り組みについては、下記のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

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