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日本マイクロソフト ワークプレイス・リニューアル プロジェクト【前編】
フェアで自由な仕事の仕方とは
日本は、今こそ真の働き方改革を進める時

日本マイクロソフト × 日建設計コンストラクション・マネジメント

  • PROJECT INTERVIEW

(右)山本 泉(日本マイクロソフト株式会社 リアルエステートアンドセキュリティ リージョナルリード MCR)
(左)佐々木 康貴(NCM マネジメント グループ チーフ・マネジャー)
(央)張 若平(NCM マネジメント グループ コンサルタント)

国内で「働き方改革」が盛んに叫ばれるようになってきたことに加え、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの企業がリモートワークを一気に推進したり、勤務体制を変更したりと、半ば急ごしらえで改革を進めざるを得ない状況に直面しました。しかしながら、改革が浸透したと真にいえる企業は少数派。多くの企業が不便に直面したり、解決すべき課題が山積していたりといった状況ではないでしょうか。
私たち日建設計コンストラクション・マネジメント(以下NCM)では、現在、マイクロソフトコーポレーションの日本法人である「日本マイクロソフト」の品川本社ワークプレイス・リニューアルのプロジェクトマネジメント(PM)業務を行っています。
2007年には在宅勤務制度を導入し、品川に本社を移転・集約した11年以降はさらに積極的に働き方改革に取り組んできた日本マイクロソフト。12年から15年に実施した「テレワークの日」「テレワーク週間」は、16年には「働き方改革週間」と名前を変えて833社が賛同・参加。自社の就業制度も変更を重ねるなど、Before コロナの段階から働き方改革を進めておられました。
同社では、今回の新型コロナウイルスの感染拡大の状況でも、20年4月に緊急事態宣言が発令される以前に、本社出社率は自主的に1.7%まで低下しており、通常業務には支障がなかったといいます。この例ひとつをとっても、日本マイクロソフトの働き方改革が従業員の意識レベルまで浸透していることがわかります。同社ではすでに「働き方改革NEXT」を掲げており、従業員に寄り添った、一歩進んだ働き方改革をされておられます。

日本マイクロソフト社の働き方改革の推移 出典:日本マイクロソフトの働き方改革

日本マイクロソフト社の働き方改革の推移 出典:日本マイクロソフトの働き方改革

 同社は初期段階の改革をどのように推進したのか、外資系企業に今の日本の職場環境や働き方はどのように映るのか……? 
同社とのプロジェクトを担当するNCMの佐々木康貴・張 若平が、同社のワークプレイス戦略責任者である山本泉氏を訪ね、グローバル企業であるマイクロソフト社とのプロジェクトへの関わりを通じて、日本人が考えていかなければならないリアルな課題について語り合いました。

東日本大震災を機に定着した、日本マイクロソフトのリモートワーク

日本マイクロソフトは、すでに10年以上の「働き方改革」の歴史をお持ちです。そもそもは何から着手したか、どんな課題があったのかお話しいただけますか。

日本マイクロソフト・山本 泉(以下山本)
私が日本マイクロソフトに入社したのは東日本大震災のすぐ後の2011年。我々が働き方改革に着手した10年ほど前は、今でいう「Microsoft Teams」のような、バーチャルでコラボレーションするツールが世界の各所で出てき始めていた頃でした。その頃の日本マイクロソフトは今とは社員の意識がまるで違っていて、正直なところ、それらのツールさえ使いこなせていなかった。出社してフェイス・トゥ・フェイスでミーティングしないとやっぱりだめだという認識が強かったんです。それが震災を機に、考えを変えざるを得なくなった。今回、コロナ禍で多くの企業が直面している状況に、我々はその時に陥ったんです。

NCM・張 若平(以下張)
私が震災当時にいた会社では、翌週から普段通りに仕事が始まったのを覚えています。御社ではその時にすでに大転換が起きていたのですね。

山本
日本マイクロソフトが現在のこの品川のオフィスに移転したのが2011年2月。その翌月に震災が起こりました。弊社は現在、完全にリモートワークが浸透していて、極端な話、一年じゅう出社しなくても成り立ちます。フリーアドレス化やリモートワークへの移行は、震災以前にも幾度も挑戦していたそうですが、なかなか浸透しないままでした。仕組みが追いついていなかったのも理由のひとつですが、要は社員の意識が変わっていなかったからなのです。それが震災を境に「出社しなくても仕事ができる」という認識が出来上がり、出社しないことによるギャップをどんなツールで埋めるべきかという発展的な議論へとシフトしましたね。家からでは会社の環境に上手にアクセスできないとか、この制度のせいでこれができないといった、リモートワークを進める際に起きる弊害は、実際に始めてみないとわからないものです。弊社でも実際に試験運用をして課題を掘り起こしていきました。2012年から2016年に実施した「テレワークの日」「テレワーク週間」「働き方改革週間」もその流れの上にあります。

2009~2019年の働き方改革の成果 出典:日本マイクロソフトの働き方改革

NCM・佐々木 康貴(以下佐々木)
2009年から2019年の10年間で、勤務時間はマイナス13%、それに比べて事業規模は180%成長しているといったデータを拝見しています。素晴らしい結果を残している一方で、グローバル各社との比較では、メールにかける時間が24%、会議時間が17%長いといったデータもあるのですね。

山本
はい。我々のワークスタイルは日本ではお褒めをいただくことが多いのですが、数字はまだまだ改善しなくてはいけない。たとえば会議の時間が長くなると当然ほかにさける時間が短くなる、仕事を終わらせるために勤務時間を長くせざるを得ない……といった具合に、数字は全部繋がっていきます。ですので改善のためには、どんどんバーチャルなツールを使っていこうという流れ・意識になっていくのです。

佐々木
リモートワークとそれに伴うバーチャルツール利用の必然性を日本中が痛感しているところだと思います。ところが、完全にリモートワークに移行するとなると、人事評価はどうするのか、労務管理体制はどう運用すればいいのか……など、ツール以外のところでも課題が出てきますよね。そういった点でまさに今悩んでいる企業にアドバイスがあればお話しいただけますか。

働く人の意識が変わらなければ、真の働き方改革は進まない

山本
人事については私の専門外の話ですが、おっしゃる通り、働く環境をよい方向へ変えるためには、ワークプレイスだけ、テクノロジーだけの改革ではだめだと思います。いずれも変革の大きな柱だけど、「人」や人事の部分はとても重要かつ、なかなか追いついてこない部分。働く人の意識が変わらない限り、働き方改革は本当の意味では進みません。日本企業の大半が、「頑張り」に対する加点をする体質を持っていますが、今後リモートワークをさらに進める際には、そこはネックになるのではないでしょうか。会社に長時間いて頑張っていたから評価が高いというようなことは、リモートワークでは通用しないので。我々はそもそも、スタッフそれぞれのジョブディスクリプションや、ゴールの設定がかなり明確な企業です。評価は「そのゴールに対してどこまでいったか」で、誤解を恐れずに言えば、“頑張っているように見える”ことに意味はありません。

佐々木
我々NCMでも、多様な働き方に対応するために旧来の総合職的な考え方を見直し、ジョブディスクリプションを定める検討をしているところですが、制度設計の難しさを実感しています。自分たちの職場はもちろん、仕事で携わる建設現場でも言えることなのですが、日本人には、隣の人のやっている事に気を配りながら、問題があれば自分の仕事ではないことでも助けにいくような、世界から見ればある意味特殊な仕事のやり方をしてきた歴史があります。ですがこれは、良し悪しはあるものの日本人の非常に優れたところでもあると思っています。個の責任範囲が明確であるグローバルな環境だと、こういうことは起きにくいですよね。

山本
そうですね。とはいえ、結果主義だからプロセスを評価しないということではなく、曖昧なことは評価しないということです。リモートでのミーティングに参加するだけでなく、有効な意見を言えばそれは評価される。頑張っている、頑張っていないという曖昧な指標ではなく、はっきり見える貢献はきちんと評価します。


プロセスの上手下手、早い遅いではなく、結果が出せればいいという考え方はとてもフェアですね。プロセスまで細かく縛られてしまうと、生産性を上げるための本人のクリエイティビティが発揮できないように思うんです。

佐々木
我々NCMの大半のクライアントは日本企業。そのなかで、私の部門は、御社のように日本にいる外資系のクライアントに対してPMやコンストラクション・マネジメント(CM)のサービスを提供しています。その中で実感するのは、ワークプレイスや職場におけるホスピタリティについては、世界は日本に比べて10年、20年は先をいっているなということ。御社の考え方ややり方は仕事を通じて感じていましたが、今回こうしてお話を伺うと、やはりはっとさせられる点が多いです。この学びをどんな風に日本の社会にフィードバックしていけるか、また同様に日本独自の強みをどのように見つけていけるかというのは、常にテーマとして思っているところです。

外資系企業の国内プロジェクトにおけるプロジェクトマネジャーの役割

現在進行しているNCMと日本マイクロソフト社とのプロジェクトはどのようなものですか?

カスタマーフロアレセプション 完成イメージ

従業員フロア 完成イメージ

現在のカスタマーフロア


日本マイクロソフト社の品川本社における人員構成の変動に伴い、各フロアを現代のニーズに合った仕様に向けた改装を実施しています。計画には、たとえばビデオ会議ができるポッドの設置や、マインドフルネスが可能な瞑想スペース、バイオフィリア(オフィス内緑化等)のコンセプトも組み込まれています。マイクロソフト社は、オフィスのデザインについては、かなり詳細なグローバルスタンダードを自社でお持ちです。我々の仕事は、それらの要件をクリアしながら、グローバルチームとして、マイクロソフトのデザインチーム、AVチーム、ITチーム、また国内においてはローカルデザイナー、施工者や各種ベンダーなどとさまざまな調整を行うこと。コスト・品質・発注・工期を管理するPMの業務を担当しています。

佐々木
オフィスの内装改修はもとより、最新のビデオ会議システムや会議室の予約システム、従業員の位置情報をトラッキングするセンサーの設置など、デジタルトランスフォーメーション(DX)も今回のプロジェクトの目玉ですね。


国内のプロジェクトにもかかわらず、チームは香港・上海・カナダなどさまざまなグローバル拠点のメンバーで構成されているため、MicrosoftTeamsを用いて活発にコミュニケーションをしています。チームのほとんどがこのようなリモートワークに慣れているため、今回のコロナ禍のなかでも、特別な意識改革をせずに仕事を続けているように見えます。御社と一緒にこのような環境で働いてきたため、我々の部門のメンバーは社でもいち早くリモートワークに移行できたと感じています。

佐々木
先ほども申しあげたように、我々はNCMの中で外資系企業を主なクライアントにする国際プロジェクトチームです。外国のクライアントが日本国内で建設プロジェクトを実行する際に必ずつまづくのが、日本特有の商習慣やものごとの進め方がわからないまま、自国のやり方で進めようとするケースなんですよね。たとえばコストひとつをとっても、見積明細の項目だけでは、海外から見ると「これは何なのだ?」となる。今回の日本マイクロソフトさんとのプロジェクトにおいても、そういう日本独特のカルチャーとグローバルスタンダードとのギャップを調整する役割を我々が担っていると考えています。

山本
今回がNCMさんとは初めてのプロジェクトです。佐々木さんがおっしゃるように、弊社のやり方で交渉しようにも全く噛み合わないという状況が生まれてしまって。これは日本のマーケットや状況をよくご存じの国内のCM会社にお願いすべきだということになり、NCMさんにお声がけをさせていただきました。


NCMはインハウスに建築・設備・構造・コストのエンジニアが揃っていますし、さらに日建グループとしても都市・建築・土木・住宅・インテリアなど各方面のプロフェッショナルが揃いますが、それは強みなのだなと今回改めて感じています。PMにエンジニアリングのバックアップがつくことで、技術的なエリアにおいても十分なサポートが提供できると思っています。

外資系企業が日本に支店やオフィスを拡張する際に生じる課題を、クライアントの代理人としてPMを務める私たちはどのように解決していけばいいのか。座談会は後編へと続きます。

 

STORY

日本マイクロソフト【後編】
グローバル時代を生き残るために
日本で働く人々は何を変えるべきなのか

プロフィール

山本 泉
日本マイクロソフト株式会社
リアルエステートアンドセキュリティ
リージョナルリード ジャパン

マイクロソフト日本法人のワークプレイス戦略責任者として、従業員約3000名、オフィス約35000㎡を統括。30年以上にわたって外資系企業でCorporate Real Estate(CRE)業務に従事する。
1991年から2010年までサン・マイクロシステムズ社(現オラクル)で日本・韓国のワークプレイスを統括したほか、医薬系のクインタイルズ社にて日本のオフィス戦略を統括。2011年、日本マイクロソフト入社後も日本を始めアジア各国のオフィス戦略に携わる。
社外活動として、CREの責任者が集う米国に本部のあるグローバル団体、コアネット・グローバルの活動に深く関与。2004年から6年間にわたって日本支部会長を務め、現在はラーニングオフィサーとしてCREマネジメントの普及に努める。日本最大のファシリティマネジメント推進団体、日本ファシリティマネジメント協会において、現在企画運営委員、CRE研究部会員を務める。

(対談風景Photo:吉田周平)

※掲載内容は2020年時点のものです。