建設業の新3Kとは? 実現に向けた事例や建設DXの取り組みも紹介

建設業界は、厳しい労働条件で知られる「3K」(キツイ、汚い、危険)のイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし、時代は変わり、その労働条件の改善とイメージを一新するために、新たな「3K」への取り組みが建設業界で注目されています。それが「新3K」です。
新3Kとは、具体的には何を意味し、その建設業界への影響はどのようなものでしょうか? 今回のコラムでは、新3Kの意味とその実現に向けた取り組みについてご紹介します。

新3Kとは

新3Kとは「給料がよい」「休暇が取れる」「希望がもてる」を意味する言葉です。これまで建設業界には「きつい」「汚い」「危険」という3Kのイメージがあり、さらに長時間労働、休みが少ないなどの労働環境の改善が課題となっています。また、建設業界では労働者の高齢化や人手不足も深刻な問題です。
このような状況の改善と従来の3Kのイメージを払拭するために建設業界は新3Kに取り組み、多様な人材を呼び込み、魅力ある現場に変えていこうとしています。

新3Kの取り組み

新3Kの具体的な取り組みを国土交通省の直轄工事(国が実施する公共事業のことで、道路・河川・ダム・港湾など)を例にご紹介します。魅力ある建設現場に向けて新3Kの取り組みを継続的かつ強力に推進していくことで、土木分野だけでなく建築分野も含めた建設業界全体に良い影響を与えていくことが期待されています。

1)給料がよい

労務賃金の改善に関する取り組みでは、日本建設業連合会が表明した「労務費見積り尊重宣言」を踏まえ、元請企業が下請け企業から受領した「労務費見積(労務費・労務賃金を内訳明示した見積書)」を尊重する場合は、優位に評価する取り組みを行っています。全国でもモデル工事が進んでおり、建設業界全体の労務賃金改善が進むことを期待されています。
キャリアアップに関する取り組みでは、建設工事の直接的な作業を行う技能を有する技能労働者(生産工程従事者、建設・採掘従事者、輸送・機械運転従事者など)のキャリアの見通し、技能、経験に応じて適切に処遇が改善される建設業を目指して、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」を義務化するモデル工事を行っています。施工業者の施工能力の見える化にもつながり、職人さんの施工能力向上が受注機会の拡大につながります。2023年6月末時点でCCUSには120万人以上の技能労働者が登録しています。

2)休暇が取れる

休暇を増やす取り組みでは、直轄工事において週休2日を確保できるように適切な工期設定や経費の補正、現場閉所が困難な維持工事などにおいては週休2日交代制を実施する、などの取り組みをモデル工事などで行っています。また公共工事品確法の改正によって、適正な工期設定が発注者に義務付けられました。国土交通省は適正な工期を作成するためのガイドラインを公表しており、休暇がとりやすい労働環境に改善されることが期待されています。
労働時間について、現在の建設業は、36協定で定める時間外労働の上限規制の適用が猶予されています。しかし労働基準法の改正により、建設業は、2024年(令和6年)4月1日から時間外の労働の上限は原則として、月45時間・年360時間となり、罰則付きの時間外労働規制が適用されます。これによる労働時間の見直し、週休2日正の推進、年次有給休暇取得の促進などの効果が期待されています。

3)希望がもてる

建設現場の生産性向上を図るための取り組みとして、革新的技術などを活用する「i-Construction」を推進しています。i-Constructionとは建設現場の調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのすべての建設生産プロセスにおける生産性の向上を目指す取り組みで、これまでより少ない人数・工事日数で同じ工事の実現を目指します。
また公共工事では、特定の期間に業務が集中することを避け、労働者の処遇改善や資材・機材などの効率的な活用促進を図るために、発注者が公共工事等の中長期的な発注見通しを公表することが発注者の責務となりました。

参考1:新3Kを実現するための直轄工事における取組 国土交通省
参考2:労務費見積り尊重宣言 一般社団法人日本建設業連合会
参考3:建設キャリアアップシステムポータル 国土交通省
参考4:建設会社の 「働き方」が変わります!! 工事発注者の皆様へ 厚生労働省
参考5:建設工事における適正な工期設定等のためのガイドラインについて 国土交通省
参考6:公共工事等の中長期的な発注見通しの公表について 国土交通省

新3Kの実現に向けた新技術の活用や取り組みの事例

新3Kへの取り組みについて、注目されている技術や取り組みについて、4つの視点からご紹介します(2023年6月時点)。

1)生産性向上と建設DX

建設DXとは、建設業界における新しい技術やデジタル技術を導入して、業務の効率化や生産性の向上などを図り、長時間労働や人手不足といった建設業界が抱えるさまざまな課題を解決する取り組みのことです。
3次元データを活用した土木工事の取り組みでは、3次元データを使用することで、工事内容をより細かくシミュレートし、作業効率を高め、作業時間の縮減、安全性の向上に取り組んでいます。また、建設プロジェクトでは3次元データを共有することで建設生産・管理の高度化を図る取組み(BIM/CIM、建築分野のBIMの概念を土木分野でも活用)が進んでいます。
ほかにも、5Gを活用した無人化施工、ドローンを点検作業に活用することで人が危険な場所へ行く回数を減らすなど働きやすい環境の取り組みが進んでいます。

2)働き方改革

生産性向上と労働環境改善を目指し、働き方の改善や新たな働き方の導入が進んでいます。
例えば、AIを活用した労働管理システムを導入している事例があります。現場作業員の健康管理や労働状況をより早く把握するシステムとAIによって、従業員の疲労度をチェックや、より一人ひとりに合った予防的な対策、速やかな作業スケジュール調整を行っています。
そのほかWEB会議などの活用により、従来は現場に行かないと参加できない打合せや施工状況の確認が遠隔でも可能になり、建設現場での働き方が改善されています。

3)人材育成

新3Kの実現には労働環境を改善するだけでなく、人材の育成や教育の革新も不可欠です。
例えば、教育プログラムにはVR(Virtual Reality、仮想現実)を活用されています。VRを使用することで現場の危険な状況をよりリアルに体験することができ、安全意識の向上や事故防止を図っています。
また、建設業界の魅力や多様性を伝えるために、高校や大学、自社、業界でのキャリア教育に積極的に取り組んでいます。これらの活動は、学生の理解や関心を深めて新たな人材の獲得の機会や、自社の社員や建設業の従事者がどのように働いていくか、ベテランや先輩から何をどう学ぶかなど、働き方を考える機会につながっています。

4)担い手の確保

建設業界は人口減少や高齢化の進行によって深刻な人手不足です。そのため次世代の担い手の確保に向けた取り組みが行われています。
例えば、新3Kに「かっこいい」を加えた「新3K(給与、休暇、希望)+K(かっこいい)」を伝える活動です。地震や水害などの自然災害時における建設業の緊急対応は、地域の人々の生命や財産を守る活動です。この建設業が地域を守り・貢献する「かっこいい(K)」活躍をより多くの人へ認知してもらえるように写真や動画、SNSなどで積極的に発信していくことが検討されています。
そのほか、これまで以上に女性が働きやすいよう、トイレ・更衣室・作業着などを改善する取り組みも引き続き行われています。

参考7:建設事業各段階のDXによる抜本的な労働生産性向上に関する技術開発
    国土交通省 国土技術政策総合研究所 社会資本マネジメント研究センター
参考8:建設現場で働く人々の誇り・魅力・やりがい向上にむけた取組
    国土交通省
参考9:戦略的後方に関する報告書要旨(戦略的広報検討委員会)
    一般社団法人 全国建設業協会

新3Kと建設業界の今後

以上のような取り組みを通じて、建設業界は新3Kの実現に向けて大きな一歩を踏み出しています。
今後も労働環境の改善や、テクノロジーの進歩と働き方改革を一体的に推進し、より安全で働き甲斐のある環境を創出していくことで、若者をはじめとする幅広い人材の獲得が期待されています。

新3Kを中心に建設業界の工事現場に関する課題や建設DX、働き方改革に関する内容をご紹介しました。建設工事の着工から完成までの流れや、環境やコストにやさしい建設工事については下記のコラムで解説しています。また建設業の「施工管理」と「コンストラクション・マネジメント」、「施工監理」、「現場監督」の役割や違いについてを下記のコラムで解説しています。あわせてご覧ください。

建築工事の流れをわかりやすく解説
建設業の「施工管理」と「コンストラクション・マネジメント」、「施工監理」、「現場監督」の役割や違いについて

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