「いきたくなるオフィス」それは健康に過ごせる場所

「健康的なオフィス」をめざして

設備設計チームとして空調設備や衛生設備といったインフラ系を担当し、環境デザイナーとしてウェルネスの認証制度であるWELL認証取得をコーディネートしました。大阪オフィスのコンセプトである「いきたくなるオフィス」にはどのような設備が必要か、特にウェルネスに関してはこのコンセプトに合致したファンクションを追求し試行錯誤を繰り返しました。

コロナ過により、働く人たちのウェルネスへの社会的な関心が一気に加速していく中、今回のプロジェクトは、ウェルネスの本質である「働く人が健康で幸福な状態であること」に会社として取り組むことを本気で考える大きなきっかけになったと感じます。また、会社や社会が持続的に発展するためには、そこで働く人の健康がすべての基盤になりますよね。今回のプロジェクトにウェルネスの概念を取り入れることは、日建設計コンストラクション・マネジメント(以下、NCM)のサステナビリティの基盤づくりにかかせない要素でした。

欧米・中国などでは、優秀な人材の確保や人的資本への投資を目的に、ウェルネスへの投資が進んでいます。また、その効果については、さまざまな研究機関によって、健康性・生産性の向上の報告がなされている一方で、実運用レベルのエビデンスが少ないため、国内では導入に踏み切れない企業が多いことも事実です。NCMは建築のコンサルティングファームとして今回のプロジェクトを、未来の働き方に対するNCMの考え方を体現する実証実験の場と捉え、WELL認証の取得を通し、多様なウェルネスの取り組みとその検証を実施しようと考えました。
 

2024年1月に「WELL Building Standard TM v2(WELL認証v2)」のゴールドを取得

WELL認証を取得する意義とは

国際的な建築性能評価制度であるWELL認証は、日本の慣習とフィットしない部分も多くありました。また、竣工後60年以上が経過したOLDビルのテナントで認証を取得することは大きなチャレンジだったと思います。建物の基本的な構造が変更できないという制約の中で、必須項目の要件を満たし、どこまで加点項目のポイントを獲得できるか、外部コンサルタントと協働しながら従業員や経営層を巻き込み、ひとつひとつ丁寧にポイントを積み上げていった作業はとても苦労しましたね。
敷地周辺に目を向けると、淀屋橋地区では大規模な再開発事業が複数あり、数年後には真新しいビルに囲まれた状況になります。そのようなテナント競争が激化してゆくなかで、WELL認証を取得できたことは、OLDビルの付加価値(競争力)を高める契機になるのではないかと感じています。
 

大阪オフィスの評価コンセプトとスコア

ウェルネスの鍵は「おせっかい」

実は「WELL」は施設運営側の利用者に対する、いい意味での『おせっかい』という捉え方ができるのではないかと思っていて、心地よい音楽が流れ、季節や時間に合わせて照明の色が変わり、ナチュラルな香りにつつまれ、視界には常に植物がある…従業員をはじめ実際に使う人が快適に過ごせるためではありますが、ちょっと余計なお世話という見方もできますよね(笑)。
そういうところも大阪オフィスのコンセプトにある「いきたくなるオフィス」や「おせっかい」といったキーワードに、とても深く関わっているんだと思います。オフィスを利用する人がより健康で幸福な状態に近づけるための取り組みとして、自宅にはないウェルビーイングを感じてもらい、「やっぱりオフィスがいいよね」って行きたくなるようになると、仕事に対するモチベーションも変わってくるのではないかと思っています。
 

よりよい選択を無意識のうちにしてしまう、そんな取り組みをしていく

時間や場所を自由に選択して働ける社会になり、さまざまな働き方が受け入れられ働き方のスタイルは個人に委ねられるようになりました。人に囲まれたオープンな社交的な場が好きな人もいれば、静かな場所が好きな人もいます。自宅で集中して仕事をしたい人もいれば、同僚と一緒にいるのが好きな人もいます。個人のライフスタイルや多様性を認めながら、組織の一体感を高め、生産性を向上させていくにはみんなの心と体のモチベーションを高めて取り組むことが、一番大事かなと感じています。それが心の健康や働く健やかさにつながっていくのではないでしょうか。

私たちNCMが担っているコンストラクション・マネジメント業務は、人がたくさん集まる「場」のコンサルティングの事業と捉えることができると思います。そういう意味で今回の自社オフィス改修においてNCMが考える新しい働き方や新しいオフィスの在り方をメッセージとして社内外に発信していかないといけないと思っています。これからも私はこの大阪オフィスのようにウェルネスやサステナビリティへの姿勢が感じられる空間をつくっていきたいですし、このオフィスを見て実際に感じてもらうことで、こういう考え方や取り組み方があるんだと気づいて、そこから会話が生まれたらうれしいですね。このオフィスに集まれば健康的であったりモチベーションがあがったり…そういう仕掛けをたくさんつくって、オフィスに来ると「元気になった」「調子がいい」、そう感じてもらえる空間を目指していきたいと思います。
 

 
石田 恒章
NCM 大阪オフィスリニューアルプロジェクト
WELL・環境デザイナー

日建設計コンストラクション・マネジメント
マネジメント・コンサルティング部門 ディレクター