コミュニケーションから始まる「おせっかい」

コミュニケーション活性化のための種を蒔く

私は外資系企業に長く勤めていて、そこで組織形成やコミュニティ運営に携わりキャリアを積んできました。全く設計や建築というバックグラウンドがない私に「一緒にお仕事しましょう」と声をかけてもらって、その時に大阪オフィス改修のコンセプトやその意義をプロジェクトチームから熱いプレゼンを受けたんです。「人と人を繋ぐ専門家が不可欠で、必要だ」って。

コロナ禍でリモートワークが急速に普及したことで、人と人とのつながりが無理やり切れてしまったように思ったんですよね。それをもう一度つなぎ直してコミュニティを形成する、そういう役割が必要なんじゃないかなと思っていました。会社のフロアでばったり誰かに会っても「お疲れ様です」といった声かけがない。些細なことですがそういう小さなコミュニケーションがいろんなところで生まれてくれば、もっと話しかけやすくなったり、なにかちょっとしたことを誰かに聞けるようになったりする。そういう機会がどんどん増えていくことが、コミュニケーションの活性化につながっていき、コミュニティもつくられてくるだろうし、そこからまたつながっていくんだと思います。

せっかくかっこいいオフィスをつくったけれど、かっこいいだけではコミュニケーションの活性化はされないですし、それだけではよりよい関係性が構築されていかない。このオフィスをいかに「生きたモノ」にしていくか、そのスペースに魂を入れていくか。結局はそこに「人」が必要になります。
オフィスを変えることで、もっとコミュニケーションをよくしたい、社内の風通しをよくしたい、そう皆さん思っている。「あ、そういうことをやりたいと思ってるけど、やり方がわからないんだ」ということを知り、私が当たり前のようにやってきたことが実は当たり前じゃなかったんだと、改めて感じました。

大阪オフィスは、“人と人をつなげるのは人”という原点に立ち返り、「いきたくなるオフィス」というコンセプトを基に何気ないコミュニケーションで日々うれしいおせっかいを焼いてくれる人を探していたので、まさに私だと(笑)。もちろん私がひとりでそれをつくりあげることは不可能ですし、皆さんと一緒につくっていくのですが、その小さな小さな最初の種を蒔いていくっていうところが今回のプロジェクトで私に課せられたミッションの1つだと思っています。
 

コミュニティチームからのフィードバックも設計段階から実施していました。例えば当初受付はゲストエリア側に体を向けるよう設計されていたんです。オフィスの約1/3をオープンなゲストエリアとし、社内外をつなげるプラットフォームとして活用していくコンセプトでしたが、顔をあげたときに見えるのは前にあるゲストエリアだけで、ピッチエリアを見るためには振り返らなければならない。それは違うんじゃないか、と。体をわざわざ回転させなくても両方を見渡せるようにすることがインターナルにもエクスターナルにも対応できることの第一歩だと考え、負荷なく見えるような席の配置について相談しました。
配達の受け渡しの動線だったり、収納の数や場所などコンセプトに沿った仕様にするための動線を運営側の目線に立って、かつコミュニティ形成のためにはどうしたらいいか何度も検証しました。

ゲストエリアの中央にある白く大きなNCMカウンターも今あるような形ではなく、もう少しこぢんまりとした大きさで、少し使い勝手に制限がでるような形でした。それをコミュニティチームで「もっと大きくてシンプルな形がいい」と提案したんです。もちろん見た目だけ重視ではなく、「こういう運用の仕方をしたいのであればこっちのほうが断然理にかなってる」という説明をしました。現状、NCMカウンターにはいつも人が集まり、それぞれのスタイルで活用していってくれています。それはもちろん、大きなカウンターがあればコミュニケーションが偶発的に発生するワケではなく、コミュニティチームがその花を咲かせるために小さな種をたくさん蒔き、皆さんと一緒にトライ&エラーを繰り返した結果なんじゃないかと実感しています。
 

オフィスに来る意味=みんながコミュニケーションをちゃんと取れる場所

「いきたくなるオフィス」「自慢したくなるオフィス」を体現するには、まずは自分たちが好きになってもらうこと、自分たちがこのオフィスいいなって本当に思うこと。そうすれば自然と「うちの新しいオフィス面白いんですよ、ちょっと今度近くに来たら是非寄ってください」って自然と紹介したくなりますよね。自発的にそういう思いが自分の中から湧いてくるようなオフィスを目指しています。
そのためにはこちらからの発信が一方通行にならないように双方向コミュニケーションであるように心掛けました。私は人と人、という両輪がうまくかみ合い回り出す手助けをしています。あくまでも主役は皆さんで私は回り出したらそっと身を引く、そんなイメージです。それに自分と誰かという一対一ではなくて、その周りにいる人達も一緒に会話の中に巻き込んでいき、手を引っ張って連れてきて、巻き込んでいったら、「あ、こんな世界もあったんだ」とか「こういう人いたんだ」って気づいてもらえることがすごい大事だと思っています。
 

仕事はお金を稼ぐためだけのものではなくて、それを通じて自分がどういう経験を得るか、どういう人達と出会っていくか、そこから自分が何を吸収するか、能動的であることが大事だと思っています。
誰かに強制されて何かをやるのではなく、それが自分ごとと捉えられると、きっと自分発信の行動になっていくと思うんですよね。でもなかなかそういうふうに思えない。なぜなら、言われたことをやらなきゃいけない文化だったり、それができないとダメだっていうカルチャーが日本には残念ながらまだ根強く残っているからなんじゃないかなと。これでもいいんだよ、ちょっと外れてもいいんだよ、いろんなアイデア出していいんだよ、強みはそれぞれ違いますし、それをちゃんと生かして認められるような文化にもっと変わっていけばきっと大人も元気になるし、子供たちが「働くって楽しいんだ」とか「なんかすごい大人になるって楽しいな」って、楽しい未来を、夢を持てるような気がします。

それぞれが自分の力、自分のできることに自信を持てるようなオフィスになっていけばすごくいいですよね。この大阪オフィスはワクワクする場に、キラキラする場になっていくと信じていますし、そうなるように私もみなさんと一緒に試行錯誤しながら行こうと思います。
コミュニティマネジメント業務ってまだまだ認知されていないので、かなり挑戦領域ではあると思うんですが、今後必ず必要になる領域だと思っていますし、すごく重要ポジションだと私は思っています。私たちNCMではそこを先駆けて証明していきたいですし、できると信じています。
 

 
関口 理絵
NCM 大阪オフィスリニューアルプロジェクト
コミュニティマネジャー

日建設計コンストラクション・マネジメント
Strategy & Design Management
コミュニティマネジャー