「いきたくなるオフィス」とは?
NCMが表現する、これからのワークプレイス

新しい働き方を確立するために、私たちがどうなりたいか

私たち日建設計コンストラクション・マネジメント(以下、NCM)の新しい大阪オフィスを考えるためには、まず自らを改めて見つめ直し、今後どうなっていきたいかを考えることが必要でした。そのために指針としたのは、「つなぐ。今あるものを まだない明日へ」というNCMのコーポレートスローガンです。そこには“あらゆるプロジェクトをクリエイティブにマネジメントすること。それが私たちの使命です”と書かれているんですよね。
『クリエイティブになるための働き方を実現できるワークプレイスって何だろう』そう考えた時に、リモート環境が整っていてもやはりface to faceでコミュニケーションを取れることが大切だと思ったんです。そのコミュニケーションがクリエイティビティをつくり出していくものであるならば、従業員同士がまずコミュニケーションを取ることが我々の成長・発展には不可欠である、というのが一つの結論でした。今後働き方がどう変化していくにせよ、コミュニケーションって普遍的な価値があると思うんです。
そこで私たちが考えたのは「いきたくなるオフィス」をつくり、みんなに来てもらえるような場所を目指そう、ということ。人と触れ合う事がないと生産性って限界があるんじゃないかと感じていたんです。

「働き方を考える」ということは、会社が従業員に対してどう働いてもらいたいか、指針が必要です。しかもそれには経営者目線がないといけない。NCMは、働いている私たちがどう考えて行動するのかということを尊重してくれるボトムアップな社風なので私たちがまず経営者目線で考え、会社にはかることから取り掛かりました。
 

「いきたくなるオフィス」の実現のための現状分析からはじめていく

現状分析を行った結果、コロナ禍以降の出社率は全体の2~3割ぐらいで、そのうちデスクを使用している人が半分以下でした。そこで、新しい働き方の仮説を踏まえて、必要とされる机などに数値的なパラメータを設定しました。どのくらいのタッチポイントが必要で、執務室でどのくらいの執務席が必要か、そして、どのくらいの会議室だったらいいのか、そういうことを数値として仮説をたてました。一つひとつにエビデンスをきちんと設けた上でデザインし、オフィスの機能をレイアウトしていくという作業を丁寧に落とし込んでいきました。

新しくなったNCM大阪オフィスの「ピッチエリア」と呼ばれる執務エリアは常に更新し続けられるように計画しています。家具などの位置も自分たちで持ち運びができて、床からは電源コードが出ていない。一般的なオフィスは床からOAタップが出ていますが、そういうことを極力やめて、天井や柱面からの電源供給やポータブルバッテリーを使うことで、家具の移動性を極力高めました。結果、新しい働き方に柔軟に対応できる空間にした、ということが大きな特徴の一つですね。
家具や設備などの配置にも正解はないので、みんなから意見を吸い出し続けて、それを一つひとつ試してみて「あ、これいいね」「ここちょっと違うんじゃない?」と、とにかくトライ&エラーを繰り返し続けられるオフィスになることを狙っています。
 

「いきたくなるオフィス」を構成する5つの要素

「いきたくなるオフィス」をつくるにあたっては、コンセプトをデザインに結び付け、空間にアイデアを落とし込む作業が必要になりますが、まずはコンセプトを1段階ブレイクダウンする作業をしました。そこで導き出されたものが、「ホームライクなオフィス」、「つながるオフィス」、「はかどるオフィス」、「健康的なオフィス」、「紹介したくなるオフィス」の5つの要素です。
物理的・精神的なよりどころになり自分のお気に入りの場所だったりホッとできる場所(ホームライク)であること。社内外の人やナレッジにつながることができる機能を備えている(つながる)こと。選択性があり仕事のしやすい環境である(はかどる)こと。従業員にとって自宅にいる時と遜色のない健康的な場所である(健康的)こと。他者に紹介したり来訪してもらいたくなるオフィスである(紹介したくなる)こと。この5つの要素からそれぞれに紐づいた理想的な体験や空間のキーファンクションを検討して、コンセプトをデザインに結び付ける作業に移行していきました。
ユーザーヒアリングやワークショップの結果を踏まえてデザイナーと議論を重ねましたが、なかなかデザインに昇華できずに苦しくもあったんですけど、今思い返すとプロジェクトを通じてこのころが一番楽しかったかも知れませんね。
 

 

「働く」ということはどういうことなのか?

コンストラクション・マネジメント(CM)の仕事に従事している時は常に理論的に物事を考えているんですよね。だからこそ、感情や感性をダイレクトに刺激するようなモノが必要なんじゃないかなっていうのがオフィスにアートを導入した理由のひとつです。より質の高いクリエイティブな働き方を実現するためには、感性やコミュニケーションといった感覚的なことも大切にしていかないといけないという思いをみんなに伝えたいし感じてもらいたいです。
アートに触れ、感じることが大切で「ここが好きだな」とか、そういうことを語り合えるようなオフィスになってほしいですね。例えば内装の素材や家具などに対して職業柄「これどこのメーカーだよね」ってわかってしまう。つまりその正体が透明化されているんですけど、アートについては、感じ方がそれぞれ違うものになるだろうし、そういう曖昧なものが欲しかった。感性で解き明かされるものがあってもいいんじゃないかなと思っています。
 

 
働くということは、生きることの一部ですよね。コロナ禍以降は特にそれが顕著に表れて、パブリックとプライベートの境界がいい意味で曖昧になってきているように感じています。だからこそ、働く拠点になるオフィスは居心地のよいものにしなきゃいけない。働く環境をよくするということはもちろん、そこで働く人たちの人生を豊かにするための一つでなければならないと思うんです。

会社という場所が過ごしやすかったり、働きやすかったり…つまり会社を好きになってもらうことも大切なんですが、それと同じように社会に対するNCMのアプローチや姿勢をみんなに知ってもらうことも不可欠ですよね。会社として大阪オフィスでの取り組みを外部に向けて発信することで「NCMってこういう会社なんだ」ということを社会に示すことができる。NCMの姿勢を示し続けることによって従業員のマインドセットに影響し、社会に向けてもNCMを知ってもらう絶好の機会だったと僕は思っています。
 

 
大澤 雄二
NCM 大阪オフィスリニューアルプロジェクト
プロジェクトマネジャー

日建設計コンストラクション・マネジメント
マネジメント・コンサルティング部門 ディレクター